日本企業の誘致を積極化 税免除など複数の優遇措置を用意
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| 済南市の梁総経済師 |
斉魯ソフトウェアパークへ新たに500社の誘致を進めるなかで、梁総経済師は「最重要視している国は日本」と断言する。「日本とは文化が非常に似ているし、距離が近い。また、約60万人の学生のうち、約30%が日本語を勉強しており、日本企業を受け入れる環境はどの都市よりも整っていると自負している。地震や水害などの天災の影響を受けにくい土地柄でもあり、データセンター(DC)も設置しやすい。ベトナムなどの東南アジア諸国よりも、済南に開発拠点を設けるほうがメリットが大きい」と、盛んにアピールする。
中国政府は、約20か所のアウトソーシングモデル都市を指定しており、その一つが済南だ。税制面や人材育成面で多くの優遇措置を用意している。例えば、税制面では、法人所得税を15%に減らし、オフショアのアウトソーシング業務による収入に対して営業税を免除する。人材育成面では、新卒者を採用した企業には1人4500元を援助したり、毎年30人の大学生を採用した企業には、3万元を補助したりする仕組みもある。日本には、斉魯ソフトウェアパークの入居支援を中心とする済南市への誘致活動を手がけるために、2010年5月、日本に「中国サービスアウトソーシングモデル基地(済南)日本事務所」を設けた。日本企業を重要視している現れで、誘致活動を積極的に展開していく。

済南市のオフィスビル
済南を代表する日本企業 NEC軟件(済南)の成長過程
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| NEC軟件(済南)の木田橋龍・董事・総経理。1962年生まれで済南市出身 |
NEC軟件(済南)は、済南市を代表する日本のソフト開発会社だ。同社の木田橋龍董事・総経理は、「(済南市のある)山東省のなかで、日本からのオフショア開発実績はNo.1」と胸を張る。日本のITベンダーは、上海や北京、大連などにオフショア開発拠点を置くケースが多いが、NECソフトは済南を本拠地にし、オフショア開発を軌道に乗せた。
NEC軟件(済南)の設立は2005年で、NECグループからのオフショア開発事業ですべての売り上げを稼ぐ。設立時から一貫して右肩上がりで成長してきており、初年度6500万円だった売上高は、2011年度は19億5500万円。初年度57人だった社員は、現在は540人まで増えている。日本人は10人ほど。新卒者を積極採用し、毎年50~60人を迎え入れる。今年度は120人採用したという。従業員の平均年齢は27.5歳と若い。
木田橋董事・総経理は、「市政府は海外のソフト会社の誘致を重点施策に置いているので、さまざまな優遇措置を受けられる。山東大学などの有名大学があり、優秀な学生も獲得しやすい。北京や上海に比べて人件費も抑えられる」と済南の利点を話す。高速鉄道が整備されたことで、約1時間半で首都の北京に移動することができる地理的条件もすぐれている。
木田橋董事・総経理は、今後も済南に本拠を構える考えだが、業容の拡大に合わせて、新たな拠点を設立することを計画している。中期経営計画では、2014年度の目標売上高を37億2000万円に定めた。NECグループからのオフショア開発事業を継続・強化しながら、今年度からNECグループの中国法人各社と連携し、経営リソースを最適に活用することに本格的に取り組んでいる。
木田橋董事・総経理は、「NECグループが中国に発注している開発案件のうち、われわれが受けているのは11%(11年度実績)。これを14年度には30%まで高めたい」と意気込んでいる。そのうえで、「中国の現地企業と連携し、中国企業からのプロジェクト案件を獲得して、NECのグローバル事業と全体の業績向上に貢献したい」と語る。済南で成長したNEC軟件(済南)は、済南にとどまることなく、新たな拠点をつくって新ビジネスにも取り組もうとしている。

NEC軟件(済南)のオフィス。「品質=生命」という横断幕が飾られている