その他
起業ブームがもたらすIT業界へのインパクト SAPにみる新たな協業の可能性
2012/09/20 21:03
週刊BCN 2012年09月17日vol.1448掲載
ITベンチャー企業の起業がブームとなっている。クラウド・コンピューティング環境を用いて、モバイルやソーシャルなどの最新トレンドを取り込んで開発したサービスが次々と生まれている。一見、クラウド環境の下で生まれたITベンチャーの文化は、従来のITベンダーのそれとは相容れないようにみえる。だが、一部のITベンダーは新しい文化を育むITベンチャーとの距離を急速に縮めつつある。さまざまな方法で支援プログラムを組んでいるのだ。現在の起業ブームは、10年ほど前に起きたブームとは大きく異なる。既存のIT業界にインパクトを与える可能性を秘めているからだ。
一つの例を挙げたい。独SAPの取り組みだ。世界最大手の業務アプリケーションベンダーであるSAPは、インメモリデータベースソフトウェアである「SAP HANA」上で稼働するアプリケーション、サービスの開発を希望するITベンチャーの支援プログラム「SAP Startup Focus Program(SFP)」をグローバルで展開しており、日本国内では、既存のアプリベンダーにも門戸を開いている。今年8月下旬にキックオフイベント「SAP Startup Forum Tokyo」を開催し、二十数社、40人ほどが集まった。開発・技術面からマーケティング活動、営業活動まで、ITベンチャーを広範に支援する体制で臨む。ITベンチャーが希望すれば、SAP Venturesから出資を受けられる可能性もある。開発者は、クラウド基盤である「Amazon Web Services(AWS)」上で「HANA」の無償提供を受けるメリットを享受する。登録するだけで事前に設定した「HANA」インスタンスを稼働させて、データ分析アプリケーションなどを開発することができる。
ERP(統合基幹業務システム)ビジネスで成功を収めたSAPが、ITベンチャーとの協業を重視するのはなぜか。「HANA」上で稼働するアプリやサービスを増やしたいという思い、そしてコンシューマライゼーションによってコンシューマITと企業ITの垣根がなくなりつつある状況に対応するという狙いがある。SAP自身が変わろうとしているというメッセージもあるようだ。SAPジャパンの吉越輝信・リアルタイムコンピューティング事業本部シニアビジネスデベロップメントマネージャーは、「既存のERPパートナーとのエコシステムからではなく、白紙の状態で『HANA』のパートナーを募っている。もちろん、既存のパートナーに加わってもらってもよい」と説明する。サービスの種類は問わない。オンラインゲームでも、SAPと競合する可能性がある業務アプリでも歓迎する。唯一の条件は「HANA」を利用するということ。「技術的に優れ、バリューのあるビジネスモデルかどうか」というシンプルな選定基準である。今年中には、審査に残ったITベンチャーの成果物がお披露目になるようだ。旧と新の融合が、斬新なビジネスを生み出すことに期待したい。(信澤健太)
ITベンチャー企業の起業がブームとなっている。クラウド・コンピューティング環境を用いて、モバイルやソーシャルなどの最新トレンドを取り込んで開発したサービスが次々と生まれている。一見、クラウド環境の下で生まれたITベンチャーの文化は、従来のITベンダーのそれとは相容れないようにみえる。だが、一部のITベンダーは新しい文化を育むITベンチャーとの距離を急速に縮めつつある。さまざまな方法で支援プログラムを組んでいるのだ。現在の起業ブームは、10年ほど前に起きたブームとは大きく異なる。既存のIT業界にインパクトを与える可能性を秘めているからだ。
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