ノベル(公家尊裕社長)は、Linux製品「SUSE」とバックアップ/リカバリ製品「PlateSpin」の2種類を中心としたビジネスモデルの構築に踏み切った。2011年4月27日にThe Attachmate Groupの傘下に収まり、製品数が60種類程度にも拡大した一方、人員が減少したうえでの決断だ。13年春には、販社網も再構築する方針。
現在、ノベル、SUSE、ネットアイキュー、AttachmateがThe Attachmate Group傘下になっており、米国では4組織がそれぞれ独立したビジネスユニットでビジネスを手がけている。日本では法人になっており、ノベルが「Novell」「SUSE」のブランドについて製品の販売やサポートが行い、ネットアイキューが「Attachmate」「NetIQ」の販売・サポートと「Novell」の一部を販売している。ノベルとネットアイキューの社長には、今年6月27日付で公家尊裕氏が就任している。
そもそもノベルが買収されたのは業績不振が最大の原因だ。しかし、日本では傘下に収まった後も業績が回復しなかっただけでなく、40人程度だった人員が増減を繰り返して今年6月末の時点で30人程度までに減った。不振にあえぐIT企業の再建に携わってきた経歴をもつ公家社長が、ノベルの業績回復策として決断したのは、「売れる製品に人的リソースを集中する」という手法だ。「Linuxとバックアップ/リカバリの市場が伸びており、今後も需要が増える」と判断したことと、ほかの製品に比べて有力な販社が揃っているので、「SUSE」「PlateSpin」に絞ることにした。
組織については、ブランド別の営業体制をユーザー企業別に変更。「SUSE」「PlateSpin」のユーザー企業を新規に開拓するほか、ID管理ソフトの「Novell Identity Manager」などを導入している既存ユーザーをフォローする。販社支援を担当する部門も設置し、「営業担当者全員が『SUSE』『PlateSpin』でユーザー企業の“入口”を開ける体制を敷いた」としている。
製品を絞って営業体制を改善し、次のステップとして取り組むのが販社網の再構築だ。現段階で、有力販社は「SUSE」で日本IBM、「PlateSpin」で6社。来春をめどに「SUSE」で3社、「PlateSpin」で10社に増やす方針だ。具体的な策については、「『SUSE』のユーザー企業として獲得している金融やテレコムどちらかの分野に強いSIerとパートナーシップを組みたい」との考えを示している。「SUSE」がSAPのBIアプライアンス「SAP HANA」のOSに採用されていることから、「SAP HANAの販社を開拓することも考慮に入れる」という。「PlateSpin」に関しては、「仮想環境と物理環境の両方でバックアップとリカバリが行える強みを訴えて販社を獲得する」としている。
これまで前年を下回っていた業績が、製品を絞り込んでからは「売上高が前年を上回るようになっている」と公家社長はアピールする。販社を「SUSE」で3倍、「PlateSpin」で2倍程度に増やすことによって、「今後3年間で売上高を現状の2倍に引き上げる」と自信をみせる。製品を絞ったのは、販社との関係強化も狙いとしている。(佐相彰彦)