ソフト開発ベンダーのウイングアークは、テンダが開発したプロジェクト管理システム「Time Krei(タイム クレイ)」を採用した。ウイングアークは、同社ミドルウェア製品で帳票基盤「SVF」の客先システムへの実装を自ら手がけており、ここで発生するシステム構築(SI)プロジェクトに「Time Krei」を活用。人員の最適配置を通じて、コストや納期の管理レベルを大幅に引き上げた。今回の「Time Krei」はSaaS方式で提供しており、ユーザーのシステム運用にかかる負荷軽減にも役立っている。
ウイングアーク
会社概要:帳票やビジネスインテリジェンス(BI)関連ソフトの開発を手がける。帳票分野で多種多様なプラットフォームとの連携を強みとする。BI分野ではユーザーのITスキルを問わず必要に応じた分析、分類を支援する。
ソフトウェア提供会社:テンダ
ソフトウェア名:プロジェクト管理「Time Krei」
ウイングアークでの「Time Krei」の活用イメージ
ウイングアークは、パッケージソフトベンダーではあるが、ミドルウェア製品で帳票基盤の「SVF」の客先システムへの実装の一部については、自らSIを手がけている。ERP(統合基幹業務システム)などの業務アプリケーションからプリント装置までをつなぐためにSIが発生する工程があり、販売パートナーに協力するかたちでSVFの専門ノウハウをもった技術者が客先に出向いて作業を進める。
東京や大阪の拠点などで10人程度のSEを回す小規模なものではあるものの、顧客やビジネスパートナーからの評価は高く、昨年度(2012年2月期)は100件程度の案件を受注した。「今年は上期(12年3~8月期)だけで、すでに80案件をこなした」(ウイングアークの澤井良二・帳票事業部インテグレーションサービス部長)と、SI事業の拡大に手応えを感じている。だが、案件が増えるに従って、これまでの市販の表計算ソフトを使った管理では追いつかなくなった。顧客がSIerなどと一緒に行うSIのうち、ウイングアークが担当するのは帳票関連部分だけで、多くは数日で終了する。SI全体の進捗状況によって作業に入るタイミングがずれることも珍しくなく、「限られた人的リソースを効率的に配分することが大きな課題」(澤井部長)として浮上してきた。
テンダの中村繁貴常務(左)とウイングアークの澤井良二部長 そこで導入を検討したのがプロジェクト管理システムだ。弁護士や建築士、コンサルタントなど“人”が中心となってプロジェクトを進めていく業態で広く普及しているもので、機能と価格のバランスにすぐれたテンダの「Time Krei」の採用を2011年4月に決断し、同年9月から本稼働した。採用に至った理由は、実はもう一つある。「Time Krei」はパッケージソフト版とSaaS版があって、システム運用の負荷軽減を重視するウイングアークはSaaS版を選択。澤井部長は「もしSaaS版がなければ候補に入らなかったかもしれない」と話す。
「Time Krei」を実装していくにあって、ウイングアークは、プロジェクトの進捗やコスト状況を集計する「出来高傾向分析(EVM)」部分の将来予測機能の強化をテンダに申し入れた。パッケージソフトは原則として追加開発は行わないものだが、テンダは「Time Kreiの発展の方向性と合致する」(テンダの中村繁貴常務)として、将来予測機能の強化を行うことにした。「他のユーザーにも役立つ汎用性が高い機能を積極的に採り入れていくことが、パッケージそのものの完成度を高めることにつながる」(中村常務)と判断したからだ。「Time Krei」の導入後は、予定していた作業時間よりも長くかかっていたり、SIに入るタイミングが直前で変更になったりしても、チーム全体でバランスを取ることで作業効率が向上するようになった。SIは人員が稼働した時間でコストの大半が決まるので、稼働状況からこれまでにかけたコストや最終的にかかるであろうコスト予測を「Time Krei」で自動的に割り出すことで、「適正コストの維持と稼働率の向上による売り上げ増が期待できる」と、ウイングアークの澤井部長は高く評価している。(安藤章司)
3つのpoint
・管理レベル向上で、利益と売り上げの拡大につなげる
・パッケージ版とSaaS版の両方の選択肢を用意
・顧客の要望を採り入れ、パッケージの完成度を高める