大学の研究機関や企業のR&D部門が検証のために使用するなど、特定用途のサーバーを開発するベンダーに商機が訪れている。研究機関などは確実にユーザーとして囲い込めるし、最近ではデータセンターが特定用途サーバーのすぐれている点を評価して導入する例も出てきた。さらに、SIerが製品を仕入れて商材にしたいと要望するケースもあるようだ。国内サーバー市場の10%にも達していない小規模な市場だが、競合が少ないことと顧客層が広がりつつあること、SIerへの卸事業が加わったことなどで、市場拡大の機運が生まれている。
秋葉原を中心に展開するパソコン専門店のドスパラをグループ会社にもつサードウェーブテクノロジーズは、サーバーやワークステーション、組み込みPCを法人向けに提供している。ユーザーは、大学の研究機関や企業のR&D部門などだ。
ドスパラが個人ユーザー向けにカスタマイズしたパソコンを提供するノウハウが、グループ会社のサードウェーブテクノロジーズにも根づいており、ユーザー企業が求めるニーズを吸い上げて、個々の要望に対応することができる。例えば、最小限の消費電力で省スペース化を実現した耐久性の高いサーバー、デジタルサイネージ用にコンテンツを配信するBOX型パソコンなどだ。しかも、カスタマイズするので、マザーボードなどの入れ替え・増強によって性能を高めたり、長期間の使用に耐える仕様にできる。
こうした利便性を武器にして、ユーザーの囲い込みにも成功している。同社の売上高は着々と伸びており、野本卓・社長兼COOは、「昨年度(2012年7月期)は、前年度比12%増を果たした」と、好調ぶりをアピールする。
成功例は他社にもある。ぷらっとホームは、スマートフォンの組み込み用プロセッサとして普及しているARMコアを搭載したマイクロサーバー「OpenBlocks Aファミリ」を前面に打ち出して、通信キャリアやデータセンターをユーザーとして獲得。「OpenBlocks」シリーズについていえば、ビル会社がビルの管理や省エネを維持するために導入するケースもある。
また、ユーザー企業からだけでなく、同業のSIerからも引き合いがあるようだ。サードウェーブテクノロジーズの野本社長兼COOは、「大手メーカーのサーバーではユーザーの要望に応えられないので、当社の製品を提供している」と、こうしたケースが徐々に増えていると明かす。ぷらっとホームでも、新製品を発売するたびにSIerからの問い合わせがあるという。
今、大手メーカーを中心とする国内サーバー市場は厳しい状況に陥っている。調査会社のIDC Japanによれば、2012年第2四半期(12年4~6月)のサーバー市場規模は、金額ベースで前年同期比18.5%減の1045億円、台数ベースで31.9%減の13万3000台となっている。サーバー市場が縮小傾向にあるなかで、大手メーカーではないベンダーが順調に業績を伸ばしているということになる。これは、ユーザー企業の要望に応じて最適な製品を提供していることが大きな要因といえるだろう。サーバー市場が厳しいのは、壊れない限りはサーバーをリプレースしないというユーザー企業が多いからだ。別の見方をすれば、大手メーカーが新製品を発売したのを機に、性能の向上を理由にリプレースするユーザー企業が少なくなってきているということだ。
特定用途のサーバー市場は、まだ全体の10%に達してはいないとみられており、現段階で決して規模が大きいとはいえない。しかし、ユーザー企業を確実に囲い込んでいることや、SIerに製品を提供している状況などを踏まえると、ますます拡大することは間違いないし、さらに大きく化ける可能性がある市場だ。(佐相彰彦)