仕事に追われて、どうしても一日の時間が足りない。思いを込めてプレゼンテーション資料をつくったのに、先方には正確な意味がなかなか伝わらない。そんな悩みをもつあなたに、時間管理や情報整理に長けている富士ゼロックスのトップ営業、鹿野理人さんがアドバイスする。鹿野さんは、製薬会社向けソリューション営業の仕事を通じて身につけてきた経験から、営業の効率が上がるいくつかのヒントを教えてくれた。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
事前にお客様の質問を想定
前号でお話ししたように、私はお客様の問題点を見える化し、業務の効率化につなげることに力を注いでいる。だから、自分の仕事に関して何よりもこだわっているのは、効率のよい動きをすることだ。終電で帰ることも週二日ほどあって、仕事がとても忙しいので、貴重な時間はなるべくムダにしたくない。仕事を効率よくこなすスキルには自信があるので、私はここで、IT業界の営業パーソンの皆さんに、僭越ながらアドバイスをしたいと思う。
まず、社内の打ち合わせのコツを紹介する。私もそうだが、営業の人は基本的にチームで連携して動いているので、社内での打ち合わせが多い。私は昔、翌日の仕事について情報を伝えたり、確認したりすることを夜に行うことが多かった。しかし、夜は目指す相手がすでに帰宅の途についている確率が高い。結果として、打ち合わせが翌日になり、顧客対応に遅れが出ることを何回も経験した。だから、今は昼間に社内の打ち合わせを済ませることを鉄則にしている。
もう一つ、怠らないのは、お客様を訪問する前に、商談を頭のなかでシミュレーションするということだ。最初に話をどう切り出すかとか、お客様からどんな質問がくるかを想定して、即座に回答することができるように、情報を集める。こうして“脳内商談”を行うことによって、自分のわからないことや準備が足りていないことが明らかになる。私はシミュレーションによって、受注につながる案件が確実に増えたので、ぜひ、試していただきたい。
そして、肝心のプレゼンテーション。お客様に資料を説明するときに重視しているのは、ページ1枚あたり、内容をひと言でまとめて、「要するに、こういうことだ」と結論を出すことだ。こうすれば、お客様にとって資料内容が記憶に残りやすくなり、こちらも、営業としてどういうソリューションを考えているかが伝えやすくなると実感している。また、資料はもちろんのこと、メールでも文書のわかりやすさにこだわる。同じ日本語の文書でも、人によっていろいろなとらえ方があるので、「一文一意」の書き方を肝に銘じている。
最後に、ITツールの活用もお勧めする。私は、全国の販売パートナーを支援することを担当領域の一つにしている。テレビ会議を使って、四国や九州の販社と打ち合わせをする。わざわざ出張しなくても、離れた拠点と、お互いの顔を見ながらコミュニケーションすることが、多忙な私にとっては何よりうれしい。
平日は、このように効率のよい動きを心がけ、細かな時間管理に神経を使っている。しかし、週末は思いっきりリフレッシュする。私はバイクツーリングが趣味。この前の休日も、80kmのルートを走って、疲れた頭をスッキリさせてきたばかりである。
●日常使う営業ツール.......... ICレコーダ。ヘルスケア専門営業の鹿野さんは、専門用語や込み入った情報を扱うので、商談の録音が欠かせない。録音した内容をもとに、追加で情報を調べたり、客先の業務内容や組織に関する理解を深める。
●上司からのひと言.......... 「鹿野さんは、担当業界の高い知識を身につけるために自ら学習を重ねる努力家。お客様の課題を可視化し、構造化する高い分析力をもっている。また、営業として諦めない行動力はもちろんのこと、彼の最大の強みはお客様、社内関係者をいつの間にか巻き込んでしまう『笑顔』のリーダーシップだと思う。最新の知識に裏打ちされた論理展開と人間力をあわせもつ、わが社のトッププレーヤーだ」(ヘルスケア営業部の畑仲俊彦部長)