海外へ進出するとき、ビジネスターゲットをどこに置くかによって布陣が大きく変わってくる。SIerにとって最もターゲットにしやすいのが日系ユーザー企業だ。日本の既存の有力顧客が中国やASEANに進出するのに合わせて、自らも顧客と一緒に海外に店を出すSIerが多い。最終組立てメーカーが海外に工場をつくるときに、周辺のサプライヤーを引き連れていく構図にも似る。
ユーザーの現地化に“落とし穴”
中国ほどの市場規模になると、日系顧客だけで20億~30億円の年商になるSIerも珍しくない。ユーザー企業のIT投資が増える背景には、単なる生産拠点ではなく、中国の地場市場へ販売やサポートが拡大しているからだ。実はここに大きな落とし穴がある。ユーザーの地場市場での販売が軌道に乗れば乗るほど、中国人の営業員、マネージャー、保守担当者、ひいては経営も中国人経営者に任せる動きが顕著になる。
現地化する日系企業に対しては、SIer自身も現地化する必要がある。このため三菱商事と野村総合研究所(NRI)の合弁会社iVision上海は、日系企業をターゲットとするが、「幹部メンバーの日中混成を意識的に進めている」(iVision上海の松下隆一副総経理)と、組織・体制の再編に力を入れる。(安藤章司)

日中混成で臨むiVision上海の幹部ら。松下隆一副総経理(左から3人目)の両端を固めるのが中国人幹部メンバー
(注:登場人物の肩書きは3月取材時点のもの)