主要SIerの目下の海外進出先の中心は、中国とASEANである。この連載では、海外の成長市場でビジネスを伸ばそうとするSIerの取り組みを検証する。第1回は「なぜ中国/ASEANなのか」に焦点を当てる。

新規参入の余地が大きい新興市場

　まず、中国の2012年1～12月期の情報サービス業の売上高は、前年比28.5％増の2兆5000億元（約37兆円）で、伸び悩む日本市場（20兆円弱）よりもすでに2倍近い規模になった。また、ASEANは人口ベースでみると中国の半分弱の6億人余りだが、2050年には7億3000万人に増える見通しだ。中国はいわゆる一人っ子政策で人口抑制を続けてきたことから、2050年にはむしろ人口が12億9000万人ほどに減少することが見込まれている。こうしたことから、ASEANは中国に次ぐ有力市場と位置づけられる。

　中国の改革開放が本格的に軌道に乗る1980年代までは、一般的に海外進出といえば、欧米先進国市場がメインだった。日本の主要SIerも、1980年代に邦銀の欧米進出に対応するためにニューヨークやロンドンなどの金融都市に拠点を構えた。欧米拠点は、残念ながらバブル経済の崩壊でそれ以上伸びなかったが、近年は代わりに新規参入の余地が大きい新興市場である中国/ASEAN市場が急成長してきた。成熟度の高さから新規参入がしづらい欧米市場に代わって、主要SIerの有力進出先となったのが中国/ASEAN市場である。

　とりわけ中国は、ここ数年、GDPの伸び率を大きく上回る年率25％以上の勢いで情報サービス市場が拡大しており、日本の情報サービス業にとってもはや欠かせない巨大有望市場となっている。（安藤章司）