その他
BtoB体質への転換を打ち出すエプソン 新プリンタヘッドの投入で巻き返し
2013/05/09 21:03
週刊BCN 2013年04月29日vol.1479掲載
セイコーエプソンの碓井稔社長は、2013年度内にプリンタの新技術「次世代マイクロピエゾプリントヘッド」を搭載したビジネス向けプリンタを、コンシューマ向け製品より先に投入する計画を明らかにした。詳細については言及を避けるが、「レーザープリンタに比べて、圧倒的な速さと低コストをあわせもった製品を実現するための第一歩」と位置づける。
エプソンが、新ヘッドをビジネス向けプリンタに優先して搭載するのには、二つの理由がある。
一つは、過去10年にわたるプリンタ事業の遅れを一気に巻き返したいというもくろみだ。エプソンは、20年前の1993年にマイクロピエゾ方式を採用したインクジェットプリンタとして「MJ-500」を発売。その後のフォトプリンタ展開により、存在感を一気に高めた。だが、この成功体験が2000年代の多機能化、ビジネス領域への進出への遅れとなり、ワンチップ化で先行して価格競争力を高めたヒューレット・パッカード(HP)の後塵を拝することになる。その影響は大きく、現在のエプソンのインクジェットプリンタの売上規模は、ピーク時の2000年前後に比べて約4分の3にまで縮小している。つまり、今後のプリンタ事業の成長においては、ほぼ手つかずのビジネス向けインクジェットプリンタでの巻き返しがカギになる。
もう一つは、2016年度からスタートする次期中期経営計画において成長戦略へと大きく舵を切るエプソンにとって、2013年度からスタートした「SE15 後期 新中期経営計画」は、BtoB向け事業体質の強化が不可避となっている点だ。その切り札が、新たなビジネス向けプリンタになる。
碓井社長は、今のエプソンを「『全速力で走れ』と言ったら、すぐにコケる」と表現する。エプソンは、コンシューマ分野で成長してきた経緯があり、この分野に頼る体質が定着している。これまで何度もビジネス分野での事業拡大を目指したものの、それが実現できなかったのは、体質そのものを変革できなかったからだ。結果として薄利多売が先行し、収益性が悪化。成長戦略を構築できない悪循環に陥ってきた。この3年間の新中計の柱を、売り上げと収益拡大を過度に追わずに体質改善に置いたのも、成長戦略に転換したときに、バランスよくBtoB事業を加速できる体制づくりを目指すためだ。「プリンタ事業」のセグメント名を、今年から「プリンティングシステム事業」としたのもBtoBを意識したものといえる。
成長戦略を実行するためのBtoB体質への転換が、エプソンの成長のカギ。それを実現するのが、新マイクロピエゾヘッドを搭載したビジネス向けプリンタだ。碓井社長は、「BtoBで戦える本物の製品を用意する」と意気込む。マイクロピエゾ20周年の節目に大きな挑戦が始まることになる。(フリーランスジャーナリスト 大河原克行)
セイコーエプソンの碓井稔社長は、2013年度内にプリンタの新技術「次世代マイクロピエゾプリントヘッド」を搭載したビジネス向けプリンタを、コンシューマ向け製品より先に投入する計画を明らかにした。詳細については言及を避けるが、「レーザープリンタに比べて、圧倒的な速さと低コストをあわせもった製品を実現するための第一歩」と位置づける。
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料)
ログイン
週刊BCNについて詳しく見る
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。
- 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…