NTTコミュニケーションズ(NTT Com、有馬彰社長)は、中堅・中小企業(SMB)向けビジネスを伸ばすために、ITベンダーとの協業プログラムを設けた。クラウドや通信サービスなど、NTT ComがもつサービスとSIer・ISVがもつ製品を組み合わせたITソリューションを共同企画・販売する仕組みで、SMB向けの間接販売ビジネスでは、同社にとって初の試みだ。その経緯と狙い、NTT Comと協業するメリットを解説する。(取材・文/木村剛士)
間接営業の専門組織が主導

楠木健
第五営業本部長 NTT Comの営業部門には、他社との協業によってビジネスを伸ばすための専門組織「第五営業本部」がある。対象とするエンドユーザーは、個人・法人を問わないので、家電量販店やディストリビュータ、ハード・ソフトメーカー、SIerなど、さまざまな業種の企業とのつき合いがある、パートナービジネスの中核的営業組織だ。
新制度は、法人向けビジネスのなかでも、SMBを対象としたビジネスを伸ばすために考案したもの。第五営業本部の楠木健本部長は、「NTT ComはSMBに適した製品・サービスを数多く用意している。だが、私たちだけでは全国に点在する多くのSMBに、漏れなくアプローチすることはできない。他社との協業による販売体制の構築は欠かせないと考えた」と、新制度を設けた経緯を話す。
NTT Comは、SMB向けビジネスで案件ごとに他社とITソリューションを共同開発したり、共同マーケティング・営業したりするケースは過去にもあったが、協業方法や支援策を体系だてたプログラムをつくり、パートナーを公募するのは初の試みだ。
開発・営業の両面でサポート

深川実生
担当部長 新制度のコンセプトは、NTT Comの製品・サービスを活用したITソリューションをSIerやISVと共同で企画し、ウェブサイトやセミナー、営業スタッフによる提案活動を通して、ユーザーを協力して獲得するというもの。パートナーが活用するNTT Comの製品・サービスは限定していないが、パブリッククラウド「Cloudn」やクラウド型ホスティングサービス「Biz ホスティング」、通信サービスなどをメインに考えている。NTT Comがもつクラウドや通信サービスに、パートナーがもつソフト・サービスを付加することで提案力を強めることを狙いとしている。
ITベンダーは、パートナーになれば、NTT Comのクラウドや通信サービスを活用したソリューションを開発しやすくなり、NTT Comと共同でマーケティングを展開することで販売機会が増える。NTT Comが取得したリード(見込み顧客情報)も得ることができる。開発と販売の両面で、NTT Comの力を活用できるというわけだ。
新制度は、今年度(2014年3月期)の期首につくり、第五営業本部内に運用スタッフを配備して専用のウェブサイトも開設した。すでに、数社のITベンダーが新制度を活用してパートナーになっている(表参照)。NTT Comは、パートナーとの共同ソリューションを、「グローバル化」「スピード経営」「コスト削減」「営業力強化」「生産性の向上」「BCP(事業継続計画)「IT環境整備」というカテゴリを設けて告知し、アピールを行っている。
NTT Comは、今年度にこの新プログラムでパートナーとのソリューションを100個にする考え。新プログラムの運用を主導する第五営業本部の深川実生・営業推進部門担当部長は、「これから本格的に声をかけていく」と、セミナーやメディアを通じた告知活動を6月から本格的に展開する。