【成都市のIT産業】成都市のIT化に対する取り組み
ITインフラ整備や人材育成が進む
成都市は、IT産業が拡大し続けているが、街のITインフラ整備も活発に行われている。法整備による健全な産業の発展、ハイテクパークによる優秀なIT人材の確保、教育機関によるIT人材の育成も進んでいる。成都市自身のIT化が盛んであることも、IT産業の拡大につながっているのだ。
人材育成の支援――成都市人大教科文衛委員会
都市の情報化からスマート化へ
世界の企業を受け入れる体制も

人大教科文衛委員会
劉勇 主任委員 成都市は、法整備がしっかりしていて、中国政府から知的財産権保護のモデル地域と認定されている。産業の発展促進とマーケット環境の整備が、国際基準に沿って進められている。「成都市の産業発展に向けて、知的財産権の保護に、いっそう力を入れている」と、劉勇主任委員は強調する。
劉主任は、成都市のIT化に関連したプロジェクトに参画した経験ももっており、劉主任がみる成都市は、「前向き、先駆け、イノベーティブなど成都市に根づいている文化がITとマッチしている」という表現になる。ソフトウェア市場が拡大しており、なかでも情報コンテンツ技術が広がりをみせているなか、「今後、都市の情報化からスマート化へと変貌を遂げる」と捉えている。ビッグデータが登場し、自動的にデータを処理して分析するスマートシティがさまざまな地域で登場しつつある。成都市でも、環境保護、都市運営の精密化、交通などのスマート化だけでなく、医療衛生、教育などにITを役立てている。
成都市のIT産業のポテンシャルについて劉主任は、「すぐれた産業基盤、人材資源と大学や研究所などの基礎があるので、世界のベンダーを受け入れるための環境も整っている」という。日系企業が進出して事業を拡大できるチャンスがあるというのだ。
ソフトウェアパーク――天府ソフトウェアパーク
400企業が入居するハイテクパーク
ITベンダーの研究開発が進む

天府ソフトウェアパーク
杜婷婷総経理 2005年に設立された成都市のハイテクパーク「天府ソフトウェアパーク」は、140万m2の建築面積を有していて、国内外を含めて約400社の企業が入居し、4万人を超える従業員が働いている。外資系企業は、入居企業の約4割で、IBMやSAP、EMC、Ericsson、Dellなど大手海外メーカーが名を連ねる。日系企業ではNECも入居している。中国には、さまざまな都市にハイテクパークが存在するが、「天府ソフトウェアパークは、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)だけでなく、国内外を含めて自社ブランドのソフトウェアを提供するベンダーが入居している割合が高い。研究開発基地としての役割を果たしている」と、杜??総経理はアピールする。
入居するITベンダーのうち、3割以上が天府ソフトウェアパークで研究開発を進めているという。また、モバイル端末向けを中心にゲームアプリを開発するベンダーも入居。3割程度にも達し、モバイルインターネットに力を注いでいる成都市だからこその比率といえる。
その天府ソフトウェアパークが課題として掲げているのが「日系企業が少ないこと」という。今後、建築面積を370万m2まで拡大するという。「成都市を理解してもらい、(日系企業の)入居を促していきたい」との考えを示している。

140万m2の広大な建築面積を誇る天府ソフトウェアパーク教育機関――電子科技大学/トップ職業技術学院
産学連携を積極的に進める
インターンで企業との提携も
成都市がIT育成に積極的なのは、大学や専門学校など教育機関がITベンダーと非常に密接な関係を築いていることも要因の一つだ。成都市にキャンパスを置き、中国でトップレベルの大学として名高い電子科技大学の秦志光教授は、「大学研究室にITベンダーのラボを設置するなど、企業との密接な関係を築いていることが人材育成の強化につながっている」と説明する。
電子科技大学は、「中国国家のエレクトロニクス産業の発祥の地」と評されており、主に機械制御や電気工学、電力工学、自動制御、金属材料工学などの分野を中心に、工業技術を支えてきた主要国家重点大学の一つに位置づけられている。アメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、カナダ、ロシア、日本、韓国など、40以上の海外大学と協定を結んでいる。秦教授は、「技術管理者の育成に力を入れているほか、国際化を見据えた人材を育てることにも力を入れている」という。
高新区の西にキャンパスを構える専門学校のトップ職業技術学院は、中国政府認定のソフトウェア職業モデル校に位置づけられており、ITベンダーへのインターンシップに力を注いでいる。現時点で、100社程度と提携。馬在強常務副院長は、「企業との提携によって、各地域の経済に貢献していく」とアピールする。
在学中から研究ラボで企業が提供する製品の開発に携わったり、企業の現場で実際に開発に携わったりするので、学生は社会に出てすぐに戦力になる。このような取り組みが盛んであることも、成都市に優秀なIT人材が揃う要因になっている。

(写真左から)電子科技大学 秦志光 教授、
トップ職業技術学院 馬在強 常務副院長
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