その他
巨大すぎる“マイナンバー特需” ITベンダーの人員不足が社会問題化する!?
2013/07/25 14:53
週刊BCN 2013年07月22日vol.1490掲載
総額2700億円──。「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」、いわゆる「マイナンバー法」の対応で政府が示したシステム面での初期費用だ。民主党政権時代の2011年頃には5000億円と推計されていたので、現政権の努力で2700億円に抑えられたと思われがちだが、それは違う。
2700億円の内訳をみると、新規のシステム構築費用に約350億円、既存システムの整備費用が2350億円で、そのうちの1600億円が自治体で保有する業務システムの改修費とされている。ところがその1600億円について、行政情報研究所の所長で特定非営利活動(NPO)法人「市民と電子自治体ネットワーク」会長の諸橋昭夫氏は、「1600億円というのは、国が予算化した金額。実際にはその3倍から5倍の改修費が必要になる」と指摘する。
1742という現在の自治体数で1600億円を単純に割ると、約9000万円となる。この金額が国から自治体に交付金として提供される。しかし、これだけでは不足することを政府も認識しており、不足分については起債、つまり自治体の借金として補填することを認めている。借金は自治体の負担になる。それを嫌って、「9000万円で対応してほしい」と、自治体はITベンダーに要求したいところだが、それがまかり通ることはなさそうだ。
“1円入札”に象徴される自治体とITベンダーの関係には、安値でシステム構築案件を落札して、保守費用で回収するという構図があった。しかし、ここ数年の1円入札批判もあり、ITベンダーは収益を確保できる見積もりを提出する傾向にある。今回はITベンダーにとって案件過多の完全な売り手市場。リスクを負う状況ではない。
システム改修費の負担は自治体にとっては大きな課題だが、問題の本質は別のところにあると諸橋氏は指摘する。それは大手ITベンダーにおける自治体担当の人員不足だ。ここ数年は大きな法改正がなく、売り上げの減少とともに、体制も縮小してきている。“マイナンバー特需”は今後数年続くが、政府が小さく見積もったことが、大手ITベンダーの体制整備に影響を与えるかもしれない。状況次第では大規模自治体が優先され、小規模自治体は放置される可能性もある。その分、地場ITベンダーにはチャンスとなるが、はたしてどこまで対応できるのか。改修の対象となる業務システムは自治体あたり30から40もあり、広範な業務知識と経験が求められる。
マイナンバー制度に先行して実施された住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)は、反対意見が出たことで活用範囲が限定されることになった。同じ轍を踏まぬよう、政府はマイナンバー制度を慎重に進めている。政府が最も恐れているのは、マスコミのネガティブキャンペーンだ。ITベンダーの人員不足が、その引き金にならなければいいのだが……。(畔上文昭)
総額2700億円──。「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」、いわゆる「マイナンバー法」の対応で政府が示したシステム面での初期費用だ。民主党政権時代の2011年頃には5000億円と推計されていたので、現政権の努力で2700億円に抑えられたと思われがちだが、それは違う。
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