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押さえておきたい2014年の主要ITトレンド――取材をもとに『週刊BCN』編集部が予測
2014/01/16 21:02
週刊BCN 2014年01月13日vol.1513掲載
社会保障・税番号制度の導入に伴うシステム開発の特需や業務ソフト分野で進行するクラウド化、ディストリビュータが行う複合提案──。『週刊BCN』編集部は、主要ITベンダーの経営トップへの取材を通じて、2014年の主要なITトレンドを予測し、コンパクトにまとめた。そして、事業再編が活発で、IT業界でいま最も注目を浴びているNECと富士通の社長に経営方針をたずね、両社の主なグループ会社の動きと合わせて、NECと富士通の直近の取り組みを追う。(構成/ゼンフ ミシャ 文/安藤章司、本多和幸、佐相彰彦、真鍋武)
【SIer編】番号制度で国と民間の需要の波
2013年末、日立製作所の営業担当者が永田町をかけずり回った。官公庁に、「社会保障・税番号制度」のシステム開発を提案するためだ。胆に銘じたのは、社会保障・税番号制度という用語に注意すること。「永田町や霞が関に営業で訪れて、民主党政権が使っていた『マイナンバー制度』などと口走ったら、険悪な雰囲気になるので、留意しなければならない」と、その営業担当者は語る。
「社会保障・税番号制度」、通称「番号制度」は、システムインテグレータ(SIer)の2014年の主要なビジネストレンドの一つである。各社は提案活動を急ぎ、14~15年にかけて需要が旺盛になると見込む開発案件を獲得しようと必死に動いている。
情報サービス産業協会(JISA)は、番号制度の導入によって「システムの構築・改修の需要が一斉に発生する」ことを予測し、技術者不足への懸念を募らせている。エンジニアが足りず、せっかくの商機をものにすることはできない──そうならないように、JISAは問題整理に向けた提言をまとめるなどして、急ピッチで技術者不足の対策を講じているところだ。
番号制度のビジネス化に取り組んでいるのは、現時点では大手SIerが中心。しかし、その延長線で、中堅規模のベンダーにとってもチャンスがありそうだ。「大手が国のシステムを構築した後、一般企業や団体でのシステム改修が期待できる」。ある中堅SIerの幹部はこう捉えて、国と民間の二つの大きな需要の波があるとみている。
番号制度の導入が追い風になり、14年は、大手SIerだけでなく、中堅も活躍する余地があるだろう。
【業務ソフト編】クラウド参入が業界を活性化
番号制度に加えて、消費税率の引き上げと「Windows XP」のマイグレーションが、14年のIT業界のトレンドとして注目されている。IT各社のなかでも、この二つによる特需の恩恵を享受するのは、基幹システムを提供する業務ソフトウェアのベンダーだ。しかし4月をピークとして、14年後半は消費税改正/Windows XP関連の特需が一段落するので、業務ソフトベンダーは、その反動への対策を真剣に考えなければならない状況に置かれている。そのなかで、重要なキーワードとなるのが「クラウド」だ。
14年は、基幹業務システムのクラウド化の流れがさらに進む兆しがみえてきた。国内の中堅・中小企業(SMB)向け業務ソフト最大手であるオービックビジネスコンサルタント(OBC)が、「奉行シリーズ」のSaaS版を14年にリリースする。同社の和田成史社長は、「パッケージソフトで培ったOBCの強みを生かして、お客様が自社の未来の姿を想像できるような、クラウドならではの魅力があるソリューションを構築していく」と意気込む。
一方、ピー・シー・エー(PCA)はすでに5年前からクラウドで先行している。水谷学社長は、「プレーヤーが増えるのは大歓迎だ。市場のパイが広がり、当社の『PCAクラウド』にとっても追い風になる」として、余裕の表情をみせる。サービスの品質やクラウドのインフラ運用、クラウド商材の売り方など、長年蓄積してきたノウハウがPCAの武器だ。「新規で参入する他ベンダーに後れを取るとはまったく思わない」と、水谷社長は断言する。
【ディストリビュータ編】タブレットを引き金に複合提案
14年4月のWindows XPのサポート切れによって、クライアント端末のリプレース需要が見込まれている。このことは、パソコンだけでなく、タブレットの買い替え需要が高まる可能性を示している。これに対して、ITディストリビュータは、タブレットに紐づくかたちで「ハード販売だけではないビジネス」(東芝情報機器の影山岳志社長)を拡充し、複合提案することがカギを握ると判断している。
新商材の一つがクラウドなどのサービスだ。ディストリビュータのなかには、自社でクラウドサービスを提供するためのプラットフォームを構築して、タブレットとアプリケーションサービスを組み合わせた取り組みを進めているケースが現れている。各社は、タブレットの普及を商機と捉え、複合提案を加速する構えだ。(ゼンフ ミシャ)
2014年、富士通とNECはどう動くか――富士通はクラウドビジネス、NECはインフラ系に全力を投入
IT製品のメーカーから情報サービス事業者への変貌に取り組んでいるNECと富士通は、14年度(15年3月期)が中期経営計画の2年度目になる。両社は、新年を「収穫する年」と位置づけており、提案活動を強化するなど、実ビジネスの拡大に動こうとしている。NECの遠藤信博社長と富士通の山本正已社長が本紙取材に対応して、方針を明らかにした(7~9面と11~13面に関連記事)。
富士通は14年、グループ各社でクラウドビジネスの強化を目指し、ターゲット領域を拡大するとともに、グループ企業間の連携を進める。大・中堅規模企業に強い富士通システムズ・イースト(FEAST)は、13年12月にクラウドサービス事業に特化した子会社として富士通システムズアプリケーション&サポート(FJAS)を設立した。14年は、これを市場攻略部隊として、ターゲット層をFEASTが未開拓だった年商50億円以下の企業に営業をかけ、図書館クラウドなど、特定業種向けサービスを展開していく。
販売に関して、FJASはSMBを得意とする富士通マーケティング(FJM)と協業し、FJMが抱えるパートナー約430社を活用。FJMは「富士通グループ各社やパートナーが提供している細業種向けのクラウドサービスを販売したい」(生貝健二社長)として、SaaSのポートフォリオを拡充する。また、データセンター(DC)事業の富士通エフ・アイ・ピー(富士通FIP)は、自社のDC基盤を活用したクラウドサービスの拡販に取り組んでいく。富士通やFJMの営業リソースを生かすことによって、「販売力を強化する」(浜野一典社長)構えだ。
一方、NECは、グループ全体で社会インフラのソリューション展開に力を注ぐ。ソフトウェア開発子会社7社を統合し、4月1日付で新会社を設立。これによって、約1万2000人のエンジニアが開発を手がけるかたちで、ソリューションの中核となるソフトウェアの開発を迅速化し、案件の獲得につなげようとしている。
ICT(情報通信技術)構築が強みのNECネッツエスアイは、「NEC本体とリンクし、社会インフラの事業を伸ばす」(和田雅夫社長)ことを方針に掲げている。これまで「首都圏」と「地域」に分かれていた営業体制を統合した。東京で展開している社会インフラ系のソリューションを、今後は地方でも重点的に提案し、ビジネスの成長に結びつける。
社会保障・税番号制度の導入に伴うシステム開発の特需や業務ソフト分野で進行するクラウド化、ディストリビュータが行う複合提案──。『週刊BCN』編集部は、主要ITベンダーの経営トップへの取材を通じて、2014年の主要なITトレンドを予測し、コンパクトにまとめた。そして、事業再編が活発で、IT業界でいま最も注目を浴びているNECと富士通の社長に経営方針をたずね、両社の主なグループ会社の動きと合わせて、NECと富士通の直近の取り組みを追う。(構成/ゼンフ ミシャ 文/安藤章司、本多和幸、佐相彰彦、真鍋武)
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