家具やホームセンター商品を販売する島忠(山下視希夫社長)は、パソコンが故障した際のデータ保護の作業を簡単にするために、ヴイエムウェアのバックアップツール「VMware Horizon Mirage」を導入した。情報システム室のメンバー全員がバックアップを実行できるようにして、高度なスキルをもつメンバーがビジネスに直結する仕事に専念できる環境を整えた。構築を手がけたのは双日システムズ。島忠は同社のていねいな営業対応を評価して、「Horizon Mirage」の採用を決めた。
【今回の事例内容】
<導入企業>島忠家具やインテリア雑貨の販売のほか、ホームセンターの運営を手がける。設立は1960年。2013年8月期の売上高は1598億円、従業員数は1508人
<決断した人>情報システム室の後藤宗男・副室長(右)。双日システムズの西本信浩氏(左)の営業対応を評価して導入を決めた
<課題>高度なITスキルをもつ人材が少なく、データ保護の作業が特定のメンバーに集中していた
<対策>簡単にバックアップできるツールを導入し、メンバー全員がデータ保護の作業を実行できるようにした
<効果>作業の集中を解決し、高度なITスキルをもつ人がデータベース構築などに取り組めるようになった
<今回の事例から学ぶポイント>本業以外の仕事を少なくし、本業に集中できる環境づくりが大切
IT部門も商人の集団
その日もまた、故障したパソコンが送られてきた。「○○君、忙しいと思うけど、データのバックアップを頼むね」。部下に指示しながら、情報システム室の後藤宗男・副室長はため息をついた。「○○君は、プログラミングの知識ももつ、うちの部署のエース。本当は、壊れたパソコンのデータ保護の仕事なんかさせたくないが……」。
家具やインテリア雑貨、ホームセンター商品などの販売で、全国で70店以上の店舗を運営する島忠。全社でおよそ1000台のパソコンを使い、これらが故障したときは、情報システム室でデータを保護し、販売情報や店長会議の資料など、貴重なデータが失われないようにしている。
情報システム室は約10人のメンバーを有するが、全員が必ずしもITのプロというわけではない。その背景には、商人の精神を貫く、島忠の独特な企業文化がある。情報システム室のメンバーは、販売現場で経験を積んで、ていねいな顧客対応を胸に刻んできたうえで、現職に就いたという経緯がある。「システムエンジニアとしては優秀だが、接客に不慣れで元気な声を出して『いらっしゃいませ』と言えない人は、IT部門とはいえ、うちの会社にはなかなか合わない」と、後藤副室長は語る。
こうした背景があって、島忠の情報システム室では、故障したパソコンのデータ保護という複雑な作業をこなすことができるメンバーが限られている。したがって、バックアップの作業が数少ないメンバーに集中してしまい、彼らは自分のスキルをデータベースの構築など、直接、ビジネスに貢献する仕事に生かすことができない……。
そんな状況のなかで、後藤副室長が打ち出したのは、「ツールの導入によって、データ保護の作業を簡単にして、メンバー全員がバックアップを実行できるようにする」という方針だった。
「人」が決め手に
導入したのは、ヴイエムウェアが提供するバックアップツール「Horizon Mirage」。バックアップを自動的に行うもので、高度な知識がなくても、アイコンを選ぶだけで簡単に使うことができる。双日システムズが提案と構築を手がけ、今年4月に稼働を開始した。後藤副室長はツールの選定にあたって、「あらゆる機能をもつというよりも、今のメンバーなら本当に誰でも使えるかどうか」を最も重視。そして、提案のポイントを「使いやすさ」に絞って、島忠のニーズにぴったり対応した双日システムズに発注を決めたという。

埼玉県さいたま市にある島忠本社。全国の店舗から故障したパソコンが送られ、情報システム室でデータを保護する 数年前、夜中の島忠のサーバールーム。グループ内の統合によって、システムの改修が必要になったため、双日システムズのエンジニアは遅い時間を気にすることなく、現場での作業に励んだ。ずっとエンジニアの側にいて、真摯に作業に立ち合ったのは、双日システムズの営業担当、西本信浩氏だった。現在、ビジネスソリューショングループThinApp事業部の課長補佐を務めていて、今回の「Horizon Mirage」の提案を率いた。
後藤副室長は、「当時の、西本さんのていねいな対応を高く評価した。営業担当が深夜まで作業につきあってくれるのは、めったにないことだから。今回の提案では、製品のよさはもちろんのこと、西本さんを人としても評価して、採用を決めた」と語る。導入してまだ数か月だが、メンバー全員が新しいツールを用いて、バックアップ作業ができるようになった。今後は、高度なスキルをもつメンバーを専任にして、マーケティング用データベースの構築に取り組む。(ゼンフ ミシャ)