高博通信(上海)は、航空機の内装設備などの製造・販売を手がける中国の部品メーカーだ。中国の航空市場が急速に拡大するなか、同社が製造する部品の種類は年々増え続けて、従来のマンパワーでは生産管理が難しくなった。そこで、アスプローバの生産スケジューラ「Asprova」を導入。これによって、計画に沿った生産ができるようになっただけでなく、完成品の在庫や生産管理部門の人員を削減。さらに、納期を短縮し、顧客満足度の向上につなげた。
【今回の事例内容】
<導入企業>高博通信(上海)2006年、中国・上海に設立。従業員数は約300人。航空機の内装設備などの部品を生産している
<決断した人>黄傑
銷售総監
宣伝・販売の責任者を務めるかたわら、情報システム部門を統括している
<課題>生産する部品の種類が3000種にまで急増したことで、生産計画に乱れが生じた
<対策>アスプローバが提供する生産スケジューラ「Asprova」を導入した
<効果>計画に沿った生産ができるようになっただけでなく、製品在庫を圧縮し、生産管理部門の人員を削減。さらに、納期の短縮を実現した
<今回の事例から学ぶポイント>人手による生産管理には限界がある。事業の成長に合わせて適切なシステムを導入することが大切
人手では管理不能な3000種の部品
航空機部品メーカーの高博通信(上海)は、高品質な製品をつくることに重きを置いており、少量・多品種の生産スタイルをとっている。
中国の航空業界は、近年、国内線・国際線ともに発着便数が増加傾向にあり、中国初のLCC、春秋航空など、新興の航空会社も増えている。国際航空運送協会(IATA)によると、2012年の中国の航空業界の成長率は世界トップの9.5%。市場の急速拡大や、高品質な製品が高く評価されてきたことから、高博通信(上海)が生産する部品の種類は、12年~13年にかけて急増。現在では、3000種類にまで達している。
しかし、製品の種類が増加するにつれて、生産計画に乱れが生じ始めた。当時の高博通信(上海)は、9人の生産計画部門がExcelで人手による生産管理を行っていたが、つくりすぎて在庫を抱えてしまうといったキャッシュフロー上の問題や、定められた納期に生産が間に合わないなどの問題を抱えるようになった。
決め手はUIと代理店の専門性
そこで、高博通信(上海)では、計画的に生産を管理するシステムの導入を検討することになった。同社の情報システム部門を統括している黄傑・銷售(営業)総監は、「導入にあたって、まずは顧客の注文から原材料の調達、生産、在庫管理など、生産に関わる一連の業務フローを整理し、A4用紙で3ページ程度の要件リストを作成した」と振り返る。要件リストのなかで、とくに重要視したのが、少量・多品種への対応と、顧客の急な注文にも対応できるシステムであること。高博通信(上海)では、一個、二個といった少量の生産や、顧客に合わせた詳細カスタマイズの要望にも対応しており、システムは細かな設定を反映できるようにする必要があった。また、これまでは人手で生産計画を管理していたので、急な注文が入った際には、納期の回答までに、長い場合は1週間も顧客を待たせることがあった。
導入にあたって、グローバルベンダーや、中国地場ITベンダーを含めた数社の製品を検討。コンペでは、各ベンダーに、実際の導入時のプロトタイプを作成してもらい、数回にわたるデモンストレーションを実施した。最終的に、アスプローバの生産スケジューラ「Asprova」を扱う上海盛頡自動化科技に依頼することを決定した。
高博通信(上海)が上海盛頡自動化科技を選択した理由は大きく分けて二つ。一つは、UI(ユーザー・インターフェース)がすぐれていたことだ。黄・銷售総監は、「他のベンダーの製品は、デモンストレーションを見て、簡単には使いこなせないことがひと目でわかった。ところが、Asprovaは誰でも簡単に使いこなせそうだったので、短期間で生産計画を立てることができると考えた」と語る。
もう一つは、「代理店の専門性が高く、安心して任せられると感じたこと」だ。今回の案件を担当した上海盛頡自動化科技の盛丁国・営業総監は、前職でアスプローバの本社と中国現地法人で数年間勤務した経験をもつプロだ。Asprovaをうまく使いこなす方法を熟知している。
納期短縮が顧客満足度を向上
システムの導入は2014年4月に開始し、5月末に稼働を開始。すでに効果が出ていることを黄・銷售総監は実感している。「以前は、生産計画部門の各人が、『ここのオーダーを早くつくってほしい』と、ばらばらに指示を出すことがあったが、今はシステムに沿って、順序正しく生産できている。注文が入った際には、すぐに納期を答えられるし、部品の95%を、納期のタイミングに合わせて生産できるようになった。これによって、完成品の在庫を従来比で50%削減して、キャッシュフローの改善につなげている」。また、以前は9人いた生産管理部門を現在は4人にまで削減し、人的リソースの最適化も図っている。さらに、納期の短縮も実現した。黄・銷售総監は、「あるクライアントでは、以前は45日の納期だったものを、30日にまで短縮することができた」と語る。高品質な部品を提供するだけでなく、短納期で計画通りに部品を届けることは、顧客満足度の向上につながる。黄・銷售総監は、「クライアントとの商談に、以前よりも自信をもって臨むことができるようになった」と、笑顔を見せる。
Asprovaを導入して、高博通信(上海)は少量・多品種の部品を短納期で正確に生産できる体制を構築した。今後は、生産計画だけでなく、調達や購買、在庫管理の計画も、Asprovaを中心に考えていく方針だ。黄・銷售総監は、「関連会社や、友人の会社にも紹介していきたい」と語った。(上海支局 真鍋武)