ユーザー企業の担当者が自社のシステム運用に携わる際、本来ならば必要である改善に向けたイベント分析や、報告のためのレポート作成が後回しにされるケースが多い。これはジョブの実行状況やサーバーの稼働監視、障害対応、メンテナンスなど、日々の管理に追われているためだ。これでは、システムの最適化や運用の改善につながらず、ユーザー企業が本当に必要なIT化を行っていないということになる。このような状況を打破するため、アシストではSaaS版の運用イベント分析プラットフォーム「千里眼SaaS」を提供して、最適解を導こうとしている。理想のシステム運用を追求して、ユーザー企業のリプレースを促す方針だ。(取材・文/佐相彰彦)
工数をかけず簡単に実施
千里眼SaaSは、システム運用に欠かせない定期レポートの作成や分析に関して工数をかけずに実施できることが最大の強みだ。Amazon Web Services(AWS)上に構築したBIプラットフォーム「Qlik Sense」を分析エンジンとして採用し、システム運用時に発生するさまざまな運用イベントを多角的に分析することで現状の運用状況を可視化。7種類のレポートテンプレートを揃えており、特別なトレーニングをしないでもマウスクリックのみで操作が可能となる。分析したい内容については、ユーザー自身で自由に作成することができ、ドラッグ&ドロップだけでカスタマイズが可能だ。なお、ユーザー企業は日立製作所の統合運用管理ソフト「JP1」を導入していることが前提となる。利用料金は、月額9万8000円(税別、年間契約)に設定。サービス利用開始のための開設費用は30万円(税別)。
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千里眼SaaSの販売を担当しているシステムソフトウェア事業部の田中英二・技術統括部技術支援2部課長は、「JP1を導入しているユーザー企業から、『リアルタイムな監視は実現できているが、過去の分析ができない』という声があってサービス化に踏み切った」としている。技術統括部事業推進部営業支援課の山本愛氏は、「悩みを解決するサービスであることから、引き合いは多い」とアピールする。実際、大手のアパレルメーカーや放送局、不動産関連会社など、社員1000人以上の企業による導入が増えているという。導入企業からは、「レポートの作成時間が5分の1に短縮された」「ジョブの定義を90%削減できた」などの評価も得ているという。アシストでは、この勢いを止めずに2016年12月末までに30社への販売を目指している。
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ユーザー企業に気づかせる取り組みも
アシストでは、オンプレミス版でも「千里眼」を提供している。この製品も、大手を中心に計画通りにユーザー企業を獲得しているが、価格を320万円に設定しているため「なかには、システム運用の可視化に『そこまでお金をかけられない』という声があった」と田中課長は打ち明ける。そこで、初期費用の少ないSaaS版を提供することになった。山本氏は、「まずは手軽に使ってもらうということに重きを置いた」と訴えている。

田中英二課長(左)と山本愛氏
またSaaS版を提供したのは、もう一つの理由がある。田中課長は、「システム運用を可視化しなければ最適化は実現できないということに、そもそも気づいていない企業も実は多い」としている。千里眼の販売アプローチをかけた企業から「価格が高い」との声が挙がったため、「気づていない企業」をオンプレミス版で開拓するのは難しいと判断したのだ。
アシストでは、「JP1を販売する際にも、『手軽にシステム運用の可視化を実現してみませんか』と提案するなど顧客単価を上げることにもつながる」(山本氏)と試算している。千里眼SaaSの販路は現段階でアシストの営業担当者による直販がメインだが、JP1とのセット販売の促進などで、販売パートナーも開拓していく方針。田中課長は、「システム運用の可視化によってユーザー企業が本当の意味でのIT化を図ることができれば、IT業界にとっても活性化につながるのではないか」と捉えている。