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日本IBM コグニティブ・ビジネスを「業界特化型」へ

2017/05/18 09:00

週刊BCN 2017年05月15日vol.1677掲載

初登場のキーナン社長が17年の方針を説明

 日本IBMのエリー・キーナン社長は、4月27日から始まった年次イベント「IBM Watson Summit 2017」で、AIプラットフォーム「Watson」とクラウド関連の「コグニティブ・ビジネス」について、2017年は業界特化型の路線に力を入れる方針を説明した。キーナン社長が公の場に登場したのは今回のイベントが初めて。日本IBMは、グローバルで「中核」に位置づけられているコグニティブ・ビジネスをさらに拡大し、国内で1億人のユーザー獲得を目指す。(廣瀬秀平)

日本IBM
エリー・キーナン
社長

 「Watsonとクラウドは、大きく躍進した」。キーナン社長は、イベント冒頭のあいさつで、16年のコグニティブ・ビジネスの推移に胸を張った。

 国内では、幅広い分野でWatsonの導入が進んでいる。なかでも、キーナン社長は「ヘルスケア、ビジネスプロセス、セキュリティなど、最も重要とされている分野で活用されている。これは大事なことだ」と強調した。

 原動力の一つは、大幅に向上したWatsonの性能だ。キーナン社長は、16年2月に日本語に対応したWatsonが、「ものを聞いたり、見たり、感じたり、読んだりする力を高め、色の識別もできるようになった。会話は、ほぼ人間と同レベルで理解できる」とアピールした。

 さらに、「データの20%がウェブで検索可能で、残り80%は皆さんの競争優位性を担保するものだ」と指摘し、顧客のデータを搾取せず、しっかりと守ることができる点もWatsonの成功要因として挙げた。

 IBMでは、Watsonとクラウドは「戦略的に重要な一端を担っている」(アーヴィン・クリシュナ・IBMコーポレーションシニア・バイス・プレジデント ハイブリッド・クラウド兼IBMリサーチディレクター)。それだけに、「極めて重要な国」(同)という日本国内での導入拡大は、日本IBMにとって重要な課題になっている。

 日本IBMはこれまで、セキュリティやシステム開発など、多くの領域でWatsonの活用を打ち出してきた。ただ、「包括的な能力も必要だが、業種や業態に特化したものでなければいけない」とキーナン社長。次の一手として今回、新たに公表したのが、データ学習済みワトソンのラインアップ拡充だ。

 Watsonを導入するためには、正しい回答を導くための膨大な情報を整理した「知識ベース」を構築する必要がある。ただ、構築には時間がかかるため、顧客やパートナーと協力してあらかじめ知識ベースを構築し、導入の短期間化を狙う。

 また、導入先のすそ野を広げるため、導入価格を抑えたスターター・キットも発表した。Watsonは、一般的に「価格が高いと思われていた」(松永達也・常務執行役員コグニティブ・ソリューション事業担当)が、スターター・キットを活用することで、100万円から導入できる。

 イベントには、日本IBMと協業しているソフトバンクとJR東日本、三井住友銀行の代表者が登場した。ソフトバンクの宮内謙・社長兼CEOは、「PC、スマートフォンの時代がきて、これからの10年はAIの時代。」と提言。他社との競争に勝つためには、スピード感がより一層、重要になるとの認識を示し、「皆さんには、早くWatsonを使うことを推奨したい」と訴えた。

 キーナン社長は、「パートナーの皆さんと一緒になれば、生産性が高く、パーソナル化され、安全で持続可能な社会を必ずや構築できると思っている」と意気込む。3回目となる日本での勤務で、どのような結果を出すか。IBM内で「深く信頼されている」(クリシュナ氏)という手腕には、大きな期待がかかっている。
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外部リンク

日本IBM=http://www.ibm.com/jp/ja/