損保大手のSOMPOホールディングスのグループ企業「損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険」(高橋薫社長)が、保険金や給付金などの支払業務システムに「IBM Watson Explorer」を導入することを決めた。すでに実証実験を終えており、2017年度中に運用を開始する予定。課題となっていた平均約3営業日を必要とする支払期間を短縮し、顧客の満足度を向上させたい考えだ。

【今回の事例内容】

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<導入企業>損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険
損保大手SOMPOホールディングスのグループ企業。医療保険やがん保険などの国内生命保険事業を担う

<決断した人>
左から 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険の
野口卓夫 課長
森 智史 課長代理
日本IBMの
高木健士 Advisory IT Specialist
浅見顕祐 シニア・ソフトウェア・セールス・スペシャリスト

<課題>
保険金や給付金などの支払期間を短くしたい

<対策>
日本IBMの支援を受け、支払業務システムに「IBM Watson Explorer」を導入することを決めた

<効果>
IBM Watson Explorerの分析能力を活用することで、契約者から請求があった当日中の支払いや業務の効率化が期待できる

<今回の事例から学ぶポイント>
IBM Watson Explorerを導入する場合、あらかじめデータを整備しておくことが重要

請求件数は毎年110%の伸び

 生命保険の契約件数は、ここ数年、業界全体で右肩上がりの状況だ。一般社団法人生命保険協会(東京)によると、個人保険の保有契約件数は、入院・手術保障のある契約などが順調に伸び、12年以降、過去最高を更新し続けている。

 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険の保有契約件数も、最近は前年比約110%の伸びで推移。15年度の保有契約件数は372万6000件で、旧損保ジャパンひまわり生命と旧日本興亜生命が合併した11年度以降、4年連続で過去最高になった。

 契約件数の増加に伴い、支払いに関する請求件数も増加。損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険には、毎月約1万件の請求が寄せられる。対応する支払業務の現場では人手不足が起こっており、担当者から改善を求める声が上がっていたという。

 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険の野口卓夫・情報システム部新ビジネス開発グループ課長は、「契約件数が増えれば、支払期間の短縮は難しくなる。お客様にいち早くお支払いするために、現場の声も考慮してIBM Watson Explorerを導入することにした」と説明する。
 
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精度は「ほぼ満足のレベル」

 IBM Watson Explorerは、テキスト分析に特化したソリューション。テキストを単語ごとに分解し、用途に応じ分析ができる。

 日本IBMの浅見顕祐・アナリティクス事業部Product&Solution Data Lake Foundation(IIG)/Watson Explorer(WEX)担当シニア・ソフトウェア・セールス・スペシャリストは、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険が処理する請求件数を踏まえ、「毎月1万件というレベルだと、高速処理ができないと耐えられない。ここは当社の得意分野だ」と自信をみせる。

 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険の支払業務では、支払金額を算定する際、病名や手術名を約1万種類に細分化した「コード」と呼ばれる規定を使う。担当者は、契約者から提出してもらった診断書の内容と一致するコードを探し、支払金額を判断する。

 難しいのは、医師によって異なる言い回しからコードを特定することだ。同じ手術でも、表記が「切除」や「摘出」となっている場合があり、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険の森智史・保険金サービス部企画グループ課長代理は、「人間でも判断にばらつきが出る」と解説する。

 17年3月までの4か月間で実施した実証実験では、過去3年半分、約41万件の支払業務に関するデータをWatsonの学習に活用。言い回しの違いも含めて「業務で使う上で、ほぼ満足できるレベル」(森課長代理)まで精度を高められたとして、本格的に運用することを決めた。

 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険は、支払い漏れを防ぐため、支払業務担当者に注意を促すシステムをすでに導入している。診断書情報のデータ化を進めていたため、順調に実証実験を終えることができた。

 日本IBMの高木健士・ソフトウェア&システム開発研究所Analytics PlatformサービスAdvisory IT Specialistは、「どのような結果が出るかわからないことが多いが、今回はたまっていたデータが整っていたので、最初からいい結果が出ていた」と話す。

横展開でサービス品質アップへ

 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険は、契約者からの請求のうち、約30%を即日払いにすることを当面の目標にしている。その後は、順次、比率を上げていき、将来的に支払業務の自動化を目指す。

 さらに「せっかく導入するIBM Watson Explorerを、支払業務だけに使うのはもったいない」と野口課長。保険会社の根幹業務にあたる保険募集業務をはじめ、バックオフィスやコールセンターなど、ほかの業務にも横展開し、サービス品質のさらなる向上に努める予定だ。

 野口課長は「人だからこそできる業務もある。最終的に、すべての業務をコンピュータに任せるのではなく、注力する領域にはしっかり人材を投入できるようにしていきたい」と語る。