日本IBMは、主力AI商材の「Watson」を採用した国内企業数が1000社を超えたことを明らかにした。この1年での国内ユーザー社数は実に7倍に増えた。2016年の発売当初は、ソフトバンクが独占的に販売を始めたが、その後、段階的に一般のIBMビジネスパートナーもWatsonの販売をスタート。「ビジネスパートナーによる中堅・中小企業向けの販売が伸びた」(日本IBMの吉崎敏文・執行役員ワトソン&クラウドプラットフォーム事業部長)ことが、納入社数の増加につながったとしている。

日本IBM
吉崎敏文
執行役員ワトソン&
クラウドプラットフォーム事業部長
 Watsonの販売が順調に推移する一方で、AIの機能を十分に引き出せる人材の不足感が強まっている。同社の調べによれば、AI活用人材が不足していると回答した企業は、16年が43%だったのに対して、今年の調査では63%に高まっている。「AIの普及速度に人材の育成が間に合っていないことが数字でも裏付けられた」(吉崎執行役員)と指摘する。こうした事態を受けて、日本IBMではユーザー企業が自社でAI活用を推進できるようにする支援サービスやツール群を一段と充実させていく。

 具体的には、AIを活用するための訓練データや検証データといったAIナレッジの管理支援、実際にビジネスに適用するための本番導入支援、新しいデータで再学習するための支援、そしてAIスキルを身につけるための人材育成の支援などを想定している。日本IBMが顧客先において、実際にAIの本番稼働を支援してきた実績をもとに、AIに必要なデータやアルゴリズム、各種ツールを統合。再利用が可能な状態にして、ユーザー企業自身がAIの機能をフルに引き出せるようにする。

 また、Watsonが導き出した結論の根拠や、判断の過程をたどることができるツール群も用意した。IBMの調べでは、ユーザー企業の約6割は、AIが導き出した結論の公平性や透明性、さらに進んでは責任の所在がどこにあるのかの点を懸念している。Watsonの判断過程をさかのぼれるツール群は、ユーザーのAI活用の妥当性に対する懸念解消にも役立つとみている。

 AIの統合開発や、分析環境である「Watson Studio(ワトソン・スタジオ)」や、データ統合管理基盤の「Knowledge Catalog(ナレッジ・カタログ)」といった製品を併用することで、OSSによるAIシステム資産なども含めて、「高度な専門性がなくてもWatsonを活用できるようにしていく」(吉崎執行役員)ことを目指す。

 販売面では、日本IBMの直販が国内大手企業をメインターゲットとし、IBMビジネスパートナーは中堅・中小企業をターゲットとして役割を分担。とりわけAI人材の不足感が強い中堅・中小企業でも使いやすい支援サービスやツール群は、販売拡大にも有効に作用すると期待する。こうした取り組みによってWatsonの採用企業数を増やし、早い段階で国内1万社超のユーザー数の獲得を目指していく方針だ。(安藤章司)