米IBMは1月8日、汎用近似量子コンピューティング統合システム「IBM Q System One」を発表した。同社によると世界初とのこと。量子コンピューターの安定稼働を最大の目的としており、クラウド型のサービス提供に加え、客先設置可能なオンプレミスマシンへの第一歩となる。

IBMの汎用近似量子コンピューティング統合システム「IBM Q System One」

 IBMがサービスとして提供している量子コンピューターは、開発現場でもあるニューヨークの研究所に設置されており、外への持ち出しは想定されていない。そのため、クラウド型の利用が前提となっていたが、IBM Q System Oneによって研究所外への設置が可能になる。量産化を視野に入れた標準仕様への取り組みともいえる。かつて、IBMが仕様を公開することでPCが普及するきっかけをつくった「IBM PC互換機」と同様の取り組みとなる可能性を秘めている。なぜなら、IBM Q System Oneは、次のようなコンポーネントで構成されているからだ。

 主なものとしては、CPUに相当する量子ハードウェアのコンポーネント、超低温工学技術を搭載した量子コンピューターを冷却するためのコンポーネント、大量の量子ビットを精密に制御するためのフォーム・ファクターを採用した高精度エレクトロニクスのコンポーネントが挙げられる。そして、モジュール型のコンパクト設計を採用しているため、個別にコンポーネントを最適化できる。

 量子コンピューターは、グローバルIT大手や主要国の研究機関などが、より多くの量子ビット数を目指し、開発競争の最中にある。その多くは絶対零度まで冷やす必要のある超電導系回路の量子コンピューターを開発しており、IBMもそのグループ。IBM Q System Oneはコンポーネントで構成されるため、IBM以外のコンポーネントが稼働するという標準化への道が開ける可能性があるというわけだ。同時に量産化への道も見えてくる。

 最先端マシンにふさわしいデザインも、IBM Q System Oneの特徴の一つである。厚さ約1.3cmのガラスを使った全辺約2.7mのケースを採用。開発メンバーには、英国に拠点を置く工業デザイン・スタジオのMap Project Officeやインテリア・デザイン・スタジオのUniversal Design Studioのほか、ミラノに拠点を置き美術館のハイエンドな陳列ケースを手掛けるGoppionが名を連ね、先進的なデザインを実現した。

 IBMは同日、今年後半にニューヨーク州ポキプシーに「IBM Q Quantum Computation Center」を開設し、IBM Q System Oneを採用した量子コンピューターを設置することも発表。これにより、すでに提供している「IBM Q Network」の商用量子コンピューティングプログラムの拡張を予定している。

 オンプレミスという点では、もう一つ注目すべきマシンがある。富士通のアニーリングマシン「デジタルアニーラ」だ。オンプレミス版「FUJITSU Quantum-inspired Computing Digital Annealer オンプレミスサービス」として、今年2月に提供を開始する。アニーリングマシンは、IBMが取り組むゲートマシンとは異なり、主に組み合わせ最適化問題の最適解を求めることに活用される。デジタル回路を使用しているデジタルアニーラは、量子コンピューターにみられる冷却問題がなく、設置しやすい。これまでのサーバーと同様に、マシンルームやデータセンターに設置して活用できるようになる。アニーリング方式とはいえ、量子コンピューターが普及するきっかけをつくるマシンとして期待される。(畔上文昭)