【北京発】中国の検索最大手として知られる百度(バイドゥ)が、保有する技術を幅広い場面に応用しようとしている。自動運転の実現を目指す「アポロ計画」は、これまでの仕組みを大きく変える可能性があるとして注目されている。本社を構える北京市では、すでに別の取り組みについても実証を開始している。目指しているのは、都市機能に人工知能(AI)技術を活用する「AIシティ」の実現だ。(取材・文/上海支局 齋藤秀平)

北京に登場した“世界初のAI公園”

 北京市の中心部から車で約30分。北京市海淀区の海淀公園。広々とした園内で、数人のグループが太極拳を楽しんでいた。中国の公園ではよく見かける光景だが、ほかの公園とは少し異なる部分がある。

 グループのメンバーの前にいるは、指導役の人間ではなく大きな画面で、画面上には、太極拳の専門家と利用者の映像が映し出されている。利用者は専門家の動きを見ながら体を動かす。しっかりとした動きができていると、画面上で点数が表示される仕組みだ。

 「専門家に指導してもらえるし、自分の動きを確認できるのがとてもいい」。散歩で訪れたという近所に住む女性は、画面を見ながら笑顔で語った。女性らのグループが利用するこのシステムには、百度が提供したAR技術が使われている。
 
AR太極拳システム
 
顔認証技術で計測された1周の最速ランキング
 
無人運転技術を搭載した掃除車両

 海淀公園は、中国では「世界初のAI公園」と呼ばれている。広々とした公園を歩き回ると、AR太極拳システム以外にも、さまざまな仕掛けを見つけることができる。

 例えば、公園内のランニングコースは、顔認証技術を活用した「スマート歩道」になっている。利用者は、事前に顔を登録し、スタート地点に立ってカメラで顔を撮影する。その後、コースを走り、ゴールすると、1周のタイムや総運動時間などのデータが集計され、ディスプレーにランキングが表示される。このほか、地面に設置されたけん盤の上に乗ると、音が鳴るようになっていたり、百度の自動運転技術を搭載した無人掃除ロボットが走り回ったりしている。つまり、公園全体を対象に、百度が実証実験を展開しているわけだ。

「車と街は協働する」

 後日、北京市内にある百度本社を訪れた。まず案内されたのは、アポロ計画に関するコーナーだ。百度は2017年に計画をスタートさせた。自動運転プラットフォームを開放しているのが特徴で、百度によると、現在の参加企業数は130社以上になったという。

 百度は18年、レベル4(特定の場所で完全自動運転)のバスの実用化を発表、海淀公園などで走らせている。19年下半期には、湖南省長沙市で自動運転タクシーの商業運営を開始する方針だ。

 百度は、移動のためだけでなく、物流や農業など、幅広い場面で自動運転車両の利用を計画していることを紹介し、「自動運転は、スマート交通を実現するための一つの取り組みで、未来の都市では、車と街が協働するようになるだろう」と語った。
 
地図サービスのデータにもとづく中国国内の渋滞状況
 
百度本社内の無人運転車両の体験スペース

 自動運転には既存の領域だけでなく、百度のようなIT企業も多く参入している。世界中で開発競争が激化する中、百度は「自動運転は、非常に複雑な技術が必要だが、パートナーと技術を共有し、グローバルで自動運転技術の発展させる」としている。

既存サービスの応用

 AIシティの実現を目指すにあたって、百度は、これまでに提供してきたサービスの応用を始めている。検索サービスや翻訳サービスで磨いてきた言語処理技術や音声認識技術は、スマートホーム向けに展開している。

 百度本社には、音声で照明をつけたり、ビデオストリーミングサービスを操作したりできる展示スペースがあるほか、地図サービスで渋滞の状況や人気の観光地を可視化するスペースもある。

 百度は「われわれがこれまでに培ってきた技術を組み合わせることで、幅広い場面で応用することができる」とし、「将来的にAIシティを実現し、人々の生活体験をいろいろな面から便利にしたいと考えている」と強調する。