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SAPも自社ソリューションを本格展開、DXの基盤づくりは業務プロセスの全体最適から
2019/10/31 09:00
週刊BCN 2019年10月28日vol.1798掲載
BPMを核とした業務プロセス最適化ソリューションの市場が盛り上がってきた。BPMにRPAやプロセスマイニングなどを融合させ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の基盤づくりを意識した新世代の業務プロセス最適化ソリューションとでも言うべき製品群が登場しているのだ。ERPベンダーであるSAPも、国内でこうした包括的なプロセス最適化ソリューションの本格展開をいよいよ開始した。(本多和幸)
多くの企業でDXを経営課題とする気運は高まっているが、最初の一歩を果たしてどこに向けて踏み出せばいいのか逡巡しているケースが多いのもまた実情だ。DXでイメージしやすいのは、先端テクノロジーを活用して製品やサービスのイノベーションを起こすことだが、こうした取り組みを成功させるのが容易ではないことは自明だ。まずは足下のDXに向けた取り組みとして、BPMを核に業務プロセスの全体最適に取り組むアプローチに改めて注目が集まりつつある。
BPMによる業務改善は2000年代半ばにブームとなったが、クラウドやモバイルの流れにより業務アプリケーションや情報システムのあり方が変化し、データ量も格段に増えた。これに伴いBPMも進化し、RPAやプロセスマイニング、さらにはAIなども取り入れながら、DXの基盤を整えるためのプロセス最適化ソリューションとして新たな市場を形成しつつある。近年のRPAブームにより、局所的な個別最適化では根本的な業務改善につながらず、業務プロセスの全体最適の必要性が改めて指摘されるようになっていることも、こうした動きを後押ししている。
「データドリブン」と「インテリジェント」が進化のカギ
ビジネスアプリケーションのグローバル市場におけるトップベンダーであるSAPも、業務プロセスの全体最適にフォーカスしたソリューション群を日本市場に本格投入する。同社のプロセス最適化ソリューションは、プロセスマイニングツールの「SAP Process Mining by Celonis」、BPMの「SAP Intelligent Business Process Management(iBPM)」、RPAの「SAP Intelligent Robotic Process Automation(iRPA)」、プロセス上の課題の可視化・分析・対策ツールである「SAP Cloud Platform Process Visibility」の4製品から成る。
SAP Process Mining by Celonisは、SAPと同じくドイツ発のプロセスマイニングツール大手ベンダーであるセロニスの製品で、これがプロセス最適化の起点となる。プロセスマイニングで業務プロセスを解析し、その結果を受けてBPMがプロセスの再設計、RPAがその実行を担い、SAP Cloud Platform Process Visibilityが監視と補正の役割を担う(補正機能は今後リリース予定)。そこから再度プロセスマイニングを施し、業務プロセス最適化を継続的に行う。こうした仕組みを提供することで、「データドリブンのプロセス可視化とインテリジェントなプロセスの自動化を実現」(SAPジャパンの首藤聡一郎・バイスプレジデント兼チーフイノベーションオフィサー)し、ユーザー企業がビジネス環境の変化にスピーディーかつ柔軟に対応できるようにするというコンセプトだ。
ちなみに同社はiBPMとiRPAを「インテリジェントなプロセス自動化」に貢献する製品と位置付けている。両製品の「i」はintelligentの頭文字をとったものであり、AIを組み込んでいるのも特徴だという。
RPAブームで浮き彫りになった課題を抜本的に解決する
また、iRPAはSAPが18年11月に買収した仏コンテクスターのRPAツールをベースにした製品だ。セロニスとの協業に代表される他ベンダーとのパートナーシップのほかに、M&Aでもプロセス最適化に必要なソリューション群を整備してきた。SAPジャパンの岩渕聖・プラットフォーム&テクノロジー事業本部部長は、「RPA立ち上げのプロジェクトは5割近くが失敗し、RPAの利用拡大に成功する確率は3%に過ぎないと言われる。プロセスの課題がどこにあり、それをどのように解決してどう自動化すべきなのかを定めないままにツールだけを入れた結果だ」と指摘する。SAPはRPAの可能性に着目しつつも、RPAを生かすためにはプロセスの全体最適を実現する統合ソリューションに組み込んで使う必要があるという思想の下に、製品ラインアップを整備してきたかたちだ。
同社は近年、顧客満足度や従業員満足度などのデータを「Xデータ」、既存の業務アプリケーションが保持するデータを「Oデータ」として、XデータとOデータを連携させて分析・活用することで業務改善のためのアクションを加速させるためのソリューションに注力する姿勢を鮮明にしている。一連の業務プロセス最適化ソリューション群は、XデータにOデータを加えた従来以上に幅広い属性の大量データを業務改善に効率的に生かしていくという観点でも、同社の新しい戦略を支える製品と言えそうだ。
SAPと協業するセロニスは今年9月、日本法人を設立して本格的な営業を開始したほか、同じくドイツのプロセスマイニングツールベンダーであるシグナビオは、BPMツールを手掛けるNTTデータイントラマートと10月にパートナー契約を結び、日本市場での販路拡大に乗り出した。NTTデータイントラマートはこの協業により、SAPと類似の包括的な業務プロセス最適化ソリューション群を整備した。ベンダー側も日本市場に大きな期待を寄せており、BPMを核にした業務プロセスの全体最適化ソリューションをDXの基盤として提案していく流れは加速しそうだ。
BPMを核とした業務プロセス最適化ソリューションの市場が盛り上がってきた。BPMにRPAやプロセスマイニングなどを融合させ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の基盤づくりを意識した新世代の業務プロセス最適化ソリューションとでも言うべき製品群が登場しているのだ。ERPベンダーであるSAPも、国内でこうした包括的なプロセス最適化ソリューションの本格展開をいよいよ開始した。(本多和幸)
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