NECは4月15日、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)の新製品を発表した。基盤となるソフトウェアに、マイクロソフトの「Azure Stack HCI」を採用し、従来製品に比べソフトウェアのコストを削減することで、価格を下げたのが特徴。これから仮想化基盤を構築する中小企業や、Windowsベースの運用環境を維持したい地方自治体などへの提案を図る。(日高 彰)
専用ストレージ装置を用いるのではなく、複数台のサーバーの内蔵ストレージをソフトウェアで束ねることで仮想化基盤を構築するHCI。NECはこれまで、ヴイエムウェアのストレージ仮想化技術「VMware vSAN」をベースとしたHCIを主に提供していたが、従来は顧客ごとの個別カスタマイズで対応していたAzure Stack HCIについても、ハードウェア・ソフトウェアから構築・保守サービスまでを含んだワンパッケージの商品に仕立て上げ、拡販を本格化する。
最大の特徴は、仮想化基盤の構築に必要なソフトウェアが1パッケージに含まれているため、コストを低減できることだ。VMwareの場合はvSAN、ハイパーバイザーに加え、仮想マシン用のゲストOSライセンスにそれぞれ費用が発生するのに対し、Azure Stack HCIでは、Windows Serverに標準で含まれるストレージ仮想化機能の「Storage Spaces Direct」、ハイパーバイザーの「Hyper-V」を用いてHCIを実現可能。また、今回の新製品ではWindows Serverの上位エディションである「Datacenter」版を添付しているため、ゲストOSとしては仮想マシンを台数無制限で作成できる。NECによれば、同等性能のHCIで比較した場合、ソフトウェア部分のコストは従来製品に比べ約4割削減可能という。
また、基幹系システムの基盤をWindows Serverで構築している顧客に対しては、運用体制やOS更新のサイクルを従来通り維持しやすいのも、Azure Stack HCIのメリットとなる。特に地方自治体や医療機関などからはこのような要望が強いといい、Azure Stack HCIの導入は、NECグループが強みを持つ業種へのHCI提案を強化したいという背景もありそうだ。
2ノードで300万円を切る戦略製品を用意
今回、中小企業向けに特化した機種として、2ノード構成・OSライセンス込みで税別298万円のエントリーモデルを用意した。5から10台程度の仮想マシンを収容することを想定する。NECのプラットフォームソリューション事業部で商品企画を担当する櫛田慎哉マネージャーは、「中小企業では物理サーバーを運用しているケースがまだまだ多い。HCIではシンプルな機器構成ながら一定の品質を担保した仮想化基盤を提供できる」と説明。HCIを用いれば、データの二重化やサーバー停止時の自動フェイルオーバーといった、サービス品質保証のための機能が標準で利用可能となるので、専用のストレージ装置には手が出せない中小企業でも、高品質の仮想化基盤を構築できるとしている。
櫛田慎哉 マネージャー
NECでは、HCIの販売を促進するため、既存環境から自動的に情報を収集し、最適なスペックを提案するツールを提供するほか、HCI本体に加え、ネットワークスイッチや電源装置の設定も含む構築サービスも今後用意する予定。全国の販売店と連携し、自治体や中小企業での仮想化基盤の導入を支援していく。