大塚商会が2月1日に発表した2021年12月期通期(21年1月1日~同年12月31日)の連結決算は、売上高が前年比1.9%増の8518億9400万円、営業利益が0.9%減の558億2700万円、当期純利益が1.6%増の399億2700万円で、11年ぶりに減収減益となった前期から一転して増収増益になった。計画との比較では、売上高と各利益はいずれも未達で着地した。大塚裕司社長は、新型コロナ禍で営業活動にブレーキがかかったことや、半導体を中心とした電子部品不足に加え、強みとする営業手法を不振の要因として示し、「私どもができてない弱さの部分が露呈した」と悔しさをにじませた。
(齋藤秀平)
大塚裕司 社長
「公表している数字(計画)に届かなかったことについては大変申し訳なく思っている」。同社で開いた決算説明会で大塚社長は、21年通期の連結決算についてこう語った。結果として増収増益は確保したものの、順調に推移するとの見通しが外れたことにショックを隠せない様子だった。
同社にとっての誤算は、繰り返し感染者数が増えた新型コロナ禍の影響だ。21年は、下期(7月~12月)には感染状況が落ち着くとみていた。しかし、第5波によって夏場に十分な営業活動ができなかったほか、電子部品の不足や原材料費の高騰などがのしかかった。上期の売上高は前年を上回るペースで推移したが、下期は不足分を埋めきれず、前年割れの状況が続いた。
大塚社長は下期不振の要因として、まず1日の商談社数の低下を挙げた。組織変更や異動で新体制となった後の8月は営業1人当たり3.6社と商談していたが、それ以降は徐々に低下し12月は3社だった。また、複写機の顧客1社当たりの商材数が年間を通じて4.3商材と横ばいになったことや、AIを活用した商談の件数が微増にとどまったことも不振の要因とした。
こうした状況から、営業の現場では、行きやすい顧客のところに行く▽売りやすい商材を売る▽価格勝負に走る―の3点が課題になっていると指摘し、「お客様に寄り添って全商材を売ることは、残念ながら現場の営業一人一人までは行き渡っていなかった」と分析。その上で「総合力を生かせるビジネス体制に、もう一度切り替える」とし、これまでのモノから入る営業プロセスを課題解決から入る方向に転換させると説明した。現場のマネージメントについても「昭和の成功体験は通用しない」として、評価制度などを含めて見直しを進める考えだ。
主な連結子会社の売上高は、業務アプリケーション開発などを手掛けるOSKは88億8500万円で、ネットワーク関連製品の販売や技術サポートを展開しているネットワールドは1180億2300万円だった。大塚社長は「連単倍率は売上高で1.11、営業利益で1.15、経常利益で1.13、純利益で1.11だった。年間で見ると子会社は頑張ってくれた」と評価した。
22年の市場環境については「新型コロナウイルスの感染再拡大によって先行きは不透明」との見解を示した一方、「行政や民間でのDX化の流れは加速する」と見込む。経営方針としては、幅広い商材を生かしたソリューション提案で顧客の困りごとに対応したり、リアル営業とウェブ、コールセンターの力を結集して顧客のニーズに対応する「大戦略II」の取り組みを継続したりすることを掲げた。
大塚社長は、新しい会計基準を適用する22年12月期は、売上高で2.8%減の8280億円(21年に新会計基準を適用したと仮定した場合の売上高比較では1.2%増)を目標に設定したと説明した。これまでよりも成長率を低く設定した背景には「このままでは売上高8000億円の企業で終わってしまう」との危機感があり、「新たな成長のために、22年12月期の計画は少し踊り場のような形にした」と話した。