アバナードが手がけるマイクロソフト製ERP(基幹業務システム)「Dynamics 365」の国内販売が好調に推移している。本年度(2022年8月期)のDynamics 365関連ビジネスの売上高は、前年度比で2桁成長するとの見通しだ。伸びている理由として、年商数百億円の準大手以上のユーザー企業がERPの選定に際して、SAPなどと並んでDynamics 365を候補に含む割合が増えたことと、SaaS型ERPとしての地位を他社に先駆けて確立したことが大きい。販売力のある富士フイルムビジネスイノベーションがDynamics 365ビジネスに新規参入するなど市場全体としても活性化している。
大鐘美明 統括
従来は、例えば本社がSAPを使い、海外子会社がDynamics 365を使うことが多かった。本社でDynamics 365を使うケースでも、もともと旧バージョンのユーザーが最新バージョンに更新するパターンが多く、一定規模以上のユーザー企業が他社ERPからDynamics 365に乗り換えるパターンは、「ここ数年、国内で顕著に見られるようになった」と、大鐘美明・ビジネスアプリケーション統括は話す。
ユーザー企業のDynamics 365に対する主な評価ポイントは、クラウドネイティブで自由度の高いSaaS型ERPであることや、データ分析やローコード開発、RPA(業務自動化)などをセットにした「Power Platform」との密接な連携。クラウド基盤のAzureのシェアが拡大していることも追い風になっている。オフィスソフトの「Microsoft 365」をはじめマイクロソフト製品の操作性に慣れていることによる心理的なハードルの低さもプラスに働いている。
内藤淳史 リード
Dynamics 365は年8回程度のアップデートがあり、うち2回は大型アップデートをするなどSaaS型の特徴を備えている。「従来のカスタマイズや業種テンプレートをかぶせる手法ではなく、SaaS型に対応しやすいマイクロサービス(部品化)などのアプローチが必須」(内藤淳史・ERPソリューションエリアリード)と指摘。アバナードはマイクロソフト製品を専門に取り扱うSIerとして、SaaS型ERPの特徴に適応しつつ、「情報系から基幹系までフルラインアップで複合的に提案していく」ことで、優位性を高めていく。(安藤章司)