多くの企業がクラウドベースのITインフラストラクチャの導入を進めているため、クラウドの採用に万能のアプローチは存在しない。さらに、コロナ禍で企業はいつでもどこでも必要なときにアプリケーションが実行できる柔軟性を備えた運用を求めている。そこで登場したのがKubernetesだ。Kubernetesの進化と秘めたパワーについて、米Veeam Softwareの日本法人であるヴィーム・ソフトウェアで執行役員社長を務める古舘正清とともに紐解いていく。
Kubernetesによるモビリティの向上
Kubernetesの登場により、企業はビジネスニーズに合わせたクラウドプラットフォームを構築し、アプリケーションのモバイル化を実現することができる。Kubernetesとコンテナは、アプリケーションコードをクラウドとKubernetes間で移動させるための橋渡しとなるだけでなく、データモビリティも簡素化する。そのため、企業は効果を最大化しながら、IT投資を最適化することができる。
こうした機能性と人気の高さから、主要クラウドプロバイダーは、運用における煩雑な部分を請け負う「マネージドKubernetes」「KaaS(Kubernetes as a Service)」を提供している。プライベートデータセンター向けには、さまざまなオンプレミスソリューションを用意。多様な運用環境に対応したインフラを利用できることは、前例のないことであり、開発者や非IT部門にとって大きな力となる。
サービスとしてのKubernetes
古舘によれば、「Kubernetesの台頭によるコンテナの普及は、現代のインフラストラクチャとプラットフォームの力関係をまるっと変えた」という。Kubernetesは、コンテナ管理に適したオーケストレーターとして台頭してきた。従来のPaaS(Platform as a Service)やIaaS(Infrastructure as a Service)に代わるものを提供することで、KaaSの進化につながった。
KaaSでは、標準的な組み込み機能に知見のある開発者が、自身でアプリケーションの必要性に応じてカスタマイズすることができる。ただ、Kubernetesのオープンソースコミュニティが拡大するにつれ、ほとんどのDevOpsプロセスに対してはデプロイメントを管理・自動化できる合理的な仕組みが求められるようになった。KaaSは、PaaSのシンプルさとSaaSの安定性という、両方の長所を組み合わせたサービスになったのだ。
マネージドKaaSプロバイダーを利用することで、上級ユーザー向けには複数のメリットがある。例えば、最新のセキュリティプラグインや機能群をいつでも利用できるため、セキュリティ面でも安心だ。また、従来の慣れ親しんだクラウドサービスプロバイダーだけでなく、先駆的なオープンソースの機能とも統合することも可能。さらに、新しいクラスタやサービスを迅速でシームレスにスクラッチ開発できるため、データの負荷に応じて運用を拡張することができる。
Kubernetesが秘めるパワーを活用する
開発者エコシステムは、パブリッククラウドのマネージドKaaSを含むさまざまなKubernetes環境にインストールできる、オープンソースのクラウドネイティブ実装の選択肢を必要としている。コンテナ化の技術革命を背景に、業界を問わず、開発者はポータブルなステートフルアプリケーションを作成し、デプロイとアップグレードの柔軟性を確保し、アプリケーションの可用性と俊敏性を向上させることができるようになった。
アプリケーション開発とプラットフォーム運用の境界が曖昧になる中、クラウドネイティブの開発者はアプリケーションのライフサイクル管理を容易にするツールを必要としている。 Kubernetes向けに、ポータブルで一貫性があり、開発者に優しいアプリケーションを構築することで、現在だけでなく将来にわたってビジネスの革新と成功を導き続けることができる確かな機会をKubernetesは秘めているのだ。
■執筆者プロフィール

アンソニー・スピテリ(Anthony Spiteri)
Veeam Software シニア・グローバル・テクノロジスト
2016年10月、Veeam Software製品戦略チームに参画。19年5月に現職。クラウド領域、コンテンツの生成、エバンジェリスト活動、サービスプロバイダーの製品とパートナーに関わる業務を担当。以前は、オーストラリアの大手クラウドプロバイダーで、アーキテクチャリードを務めた。ネットワークとシステム管理の修士号を持つほか、vExpert、VCIX-NV、VCAP-DCVの資格も有する。