Sansanは、インボイス管理サービス「Bill One」の顧客基盤の拡大を目指す。これまでは大企業を主なターゲットにしていたが、今後は従業員数100~1000人規模の「ミドル層」への販売を強化する。主軸としている直接販売に加え、間接販売にも注力する方針で、販売パートナーの開拓を進める。
(齋藤秀平)
同社はこれまで、大企業を中心にした直販と、従業員数100人以下の企業向けに無料提供する「スモールビジネスプラン」の二つの戦略で顧客を獲得してきた。2020年5月にサービスの提供を開始して以来、急成長しており、23年5月期第2四半期(22年6月~11月)の売上高は前年同期比約3.3倍の4億9600万円だった。22年11月のARR(年間経常収益)は20億円を突破し、同社の寺田親弘社長/CEOは「数あるBtoB SaaSの中でも最速レベル」としている。
大西勝也 執行役員
国内では現在、10月に始まるインボイス制度に向け、請求書関係のITビジネスの盛り上がりが期待されている。同社は、Bill One事業をさらに成長させられるチャンスと捉えており、これまで展開してきた二つの戦略でカバーできていなかった企業層への導入を広げたい考えだ。
執行役員の大西勝也・Bill One Unitゼネラルマネジャーは「請求書を送ったり、受け取ったりするインボイスネットワークを拡大するために、直販では認知できなかった顧客層を持っているパートナーとの協業を積極的に進めることにした」と話す。販売パートナー契約を結んでいるコニカミノルタジャパンに加え、さらにパートナーを獲得して拡販を目指す方針だ。
パートナーに関しては、既に具体的な協業を検討している企業がある。大西執行役員は、パートナーが抱える顧客に対しては「請求書関係の業務フローを改善する観点では、当社がマーケットをつくってきたという自負がある。アナログをデジタルに置き換えるという部分で他社に比べて秀でているとの評価をいただくこともあるので、そういった強みをしっかりと訴求していきたい」と語る。
同社は、国内でBill One事業の成長を見据える一方、海外でも着々とビジネスを進めている。23年1月には、タイ・バンコクに駐在事務所を開設したと発表。シンガポールとマレーシアに加え、タイでもBill Oneの販売に力を入れ、東南アジアを中心にグローバル市場への進出を加速させる。
進出先としてタイを選んだ理由について、同社は「18年から電子署名や電子インボイスの導入を促進する政策が実行されており、紙の請求書と電子請求書が混在し、請求書業務が煩雑になっている。今後、請求書のデジタル化ニーズが増え、市場規模の拡大が期待される」などと説明。現地では日系企業を中心にアプローチを進める。
現在、Bill Oneのインボイスネットワークへの参画企業数は5万社を超えており、同社は国内外での展開に力を入れる。大西執行役員は「請求書のやりとりに関して『Bill Oneでいい』といわれるような世界をいち早くつくっていきたい」と意気込んでいる。