2023年1月1日付で米NICE(ナイス)の日本法人ナイスジャパンの新社長に就任したオリビエ・ジオレット氏が週刊BCNの取材に応じた。クラウド型コンタクトセンターソリューション「CXone」の拡販や販売パートナー戦略、体制強化に力を入れる方針を示し、「27年までに国内のクラウド型コンタクトセンター市場で30%のシェア獲得を目指す」と意気込んでいる。
(取材・文/大畑直悠)
23年中に大阪にDCを開設
──社長就任の経緯とミッションを教えてください。
これまでアジア太平洋地域において、マネージングディレクターを3年務めた経験があり、ナイスのビジネスを熟知し、国内市場への理解もあることから私が選ばれたのだと認識しています。
オリビエ・ジオレット 社長
国内市場はイノベーションへの関心が高い一方で、リスクを取らず安全策を求める傾向があり、この二つが摩擦を起こしています。顧客のリスクを低減しつつ、DXを進められるように支援することが私のミッションだと考えています。
具体的な取り組みとしては、東京に続く二つめの拠点として、23年中に大阪にデータセンター(DC)の開設を予定しています。大阪のDCでアプリケーション基盤を構築し、冗長化することが狙いで、国内の顧客やパートナーがより安心してソリューションを扱えるように努めていきます。
──どういった製品に注力していきますか。
クラウド型コンタクトセンター機能やデータ分析機能を備える主力商材の「CXone」の販売に注力します。電話やチャットなど、複数のコミュニケーションチャネルに対応できることが特徴です。国内では21年から提供していますが、現状の市場シェアには満足していませんので、今後も投資を継続します。具体的には、CXoneとAIチャットボット「ChatGPT」との連携により、エージェントを置くことなく自然な会話による顧客体験(CX)を提供できるようにします。他社のCXソリューションとの連携も進めており、顧客のニーズとマッチしたサービスの提供を目指します。
マインドセットの転換を促進
──コンタクトセンターにおけるテクノロジーの導入状況をどうみていますか。
シンガポールなどの先進国と比べると2、3年遅れているとみています。グローバルでは、CCaaS(コンタクトセンター・アズ・ア・サービス)の市場は急速に拡大していますが、国内の顧客は、データの保管場所やセキュリティへの懸念から、まだオンプレミスを選ぶ傾向があります。しかし、オンプレミス環境のコールセンターは、一度導入すると何年間も同じバージョンを使い続けなければならず、新しい製品を入れようとすると高いコストが必要になるといったデメリットがあります。DXを進める上でクラウド化は不可欠なので、顧客のマインドセットの転換を促していきたいです。
──企業の課題はどこにあるのでしょうか。
国内では、デジタルツールを用いて消費者にアプローチする部隊と、消費者からの問い合わせに対応する部隊のコミュニケーション不足が課題になっています。CXoneは、それぞれの部隊の連携を可能にするため、各企業の課題の解決に貢献できます。また、顧客への新たな提案やデータ活用によるマネタイズを支援できることも重要な価値だと認識しています。
──消費者のニーズに対し、企業はどのように対応すればいいのでしょうか。
消費者が求めているのは、データに基づくパーソナライズされたサービスの提供です。コンタクトセンターには日々、消費者とのやり取りが蓄積されています。こうしたデータは重要な経営資源であり、活用しない手はありません。CXoneのデータ分析機能では、文字に加え、音声などの非構造化データの分析が可能です。日本語の分析に長けたAIを搭載していることも強みとしており、企業のデータ活用をさらに進めることができます。
──コンタクトセンターには今後、どのような役割が求められるとみていますか。
今後のコンタクトセンターは、ただ消費者からの問い合わせを解決するだけではなく、あらゆるサービスの起点となることが期待されるでしょう。製品を買えたり、アドバイスがもらえたりするような包括的なサービスが提供できる場になると考えています。
パートナー戦略は「関係強化」と「新規獲得」が柱
──今後の販売戦略はどう考えますか。
CXoneの特徴は、大企業でも中小企業でも使えることです。企業の規模を問わず、コンタクトセンターのクラウド化を進めたいという声はあるため、そうした需要を取り込んでいきたいです。すでに動き出している大型の案件もあります。また、新しくコンタクトセンターをつくりたいという顧客には、初期導入がしやすいクラウドの強みを生かして需要をつかんでいきます。
──パートナー戦略の方向性もうかがいます。
日本市場にアプローチする上で、販売パートナーとの協力は一番重要なことだと考えており、パートナーによる販売率を拡大させていく方針です。一部直販もありますが、日本では、パートナー経由のほうが良質なサービスを提供できると考えているため、関係強化と新規獲得に注力します。
ナイスの製品を売りたいというSIerやコンサルティング会社からの声を多く聞いていますので、日本法人のパートナーの数は着実に増加していくでしょう。まずは全国に販路を持つパートナーの獲得を推進し、将来的には、地場に強いパートナーの獲得も視野に入れています。
──社内マネジメントでは、どういった面に力を入れますか。
日本法人では現在、約50人の社員がいますが、本年度中に20%増加させる予定です。技術者だけではなく、パートナーや顧客へのサポート体制を強化することが目的です。並行して国内市場での認知拡大に力を入れ、27年までにCCaaS市場で30%のシェアを獲得し、ナンバーワンベンダーを目指します。