米Symphony Technology Group(シンフォニー・テクノロジー・グループ)傘下のMusarubra Japanは、セキュリティブランド「Trellix」事業の拡大に向けた動きを加速させている。米Trellix(トレリックス)は、米McAfee(マカフィー)の法人事業と米FireEye(ファイア・アイ)が合併し、2022年1月に設立。日本では法人登記しておらず、Musarubra Japanが製品やサポートを提供。現在、両社の製品統合やパートナープログラムの刷新、製品の拡販を進めており、年内にXDR(Extended Detection and Response)などの新製品の発売を予定している。2月に社長に就任した権田裕一氏に、直近のビジネス動向や戦略を聞いた。
(取材・文/岩田晃久)
四つの製品が軸に
4月に事業戦略を発表するなど国内ビジネスが本格化している印象を受けます。
Trellixは、二つの会社が合併してできたこともあり、製品統合をはじめ大きなチャレンジをしていく必要がありました。それが一段落し、国内でも今年の後半から、新製品と新サービスの提供を開始します。今は、そこに向けて販売体制やパートナーとの連携強化を図っている状況です。
現在は、どういった製品の販売に注力していますか。
四つの製品が軸となっています。一つは、最も売れているメールセキュリティ「Trellix Email Security」です。ファイア・アイがフィッシングメールを検知するのに特化したエンジンを持っていたため、それが大きな特徴となります。メールを介したサイバー攻撃はいまだに多く、対策を強化する企業が増えていることから、今後、利用が拡大していくと考えています。
権田裕一 社長
エンドポイントセキュリティ製品の販売にも注力しています。マカフィーはEPP(Endpoint Protection Platform)を得意としていたこともあり、今でも多くの企業で利用されています。ここにフォレンジック機能に強みがある「Trellix HX(旧FireEye HX)」が製品ラインアップに加わり、EDR(Endpoint Detection and Response)の部分も強化されました。しかし、ファイア・アイの製品を使いこなすには、技術力が必要となります。そのため、MDR(Managed Detection and Response)を提供するパートナーと協業し、運用までを含めたパッケージ販売をしています。年内には、既存のエンドポイントセキュリティ製品を統合し、新製品「Trellix Endpoint」として発売する予定です。
当社は、XDRによるセキュリティ運用の変革を目標としています。国内でも年内にはXDRソリューションを提供する予定です。ただ、XDRソリューションが出てきたからといって、すぐにお客様が利用するのか、利用したとしても投資効果が分かりにくいのではないかという声があることから、XDRの拡販に向けては段階を踏んだアプローチが必要だと思っています。当社には、セキュリティ運用プラットフォーム「Trellix Helix(旧FireEye Helix)」があり、相関分析などはTrellix Helixでも十分に行えますので、XDRソリューションの導入の準備として、(Trellix Helixの)利用を促進しています。
そして、DLP(データ漏えい防止)製品「Trellix DLP」の拡販にも取り組んでいます。データ保護の観点から、DLPの重要性は高まっており、海外では利用が拡大していますが、国内市場ではあまり受け入れられていない現状があります。当社の各国の法人と比べても売り上げの差が一番大きいのがDLPです。ランサムウェア攻撃では、当然のように機密データが狙われるため、それを守る最後の砦としてDLPは有効です。当社にはすばらしい製品があるので、リーダーシップを発揮して市場を拡大させたいです。Trellix DLPは、XDRにおいて重要なセンサーの役割を果たすことになるため、今後も販売を強化していきます。
提供予定のXDRソリューションはどういったものになりますか。
自社製品以外にも、約1000のサードパーティー製品をXDRのセンサーとして利用できるプラットフォームとなっています。各センサーから収集したデータを解析する「Trellix XConsole」を年内にリリースする予定なので、そこから販売を本格化します。
先ほども述べたように、当社の目標はセキュリティ運用の変革です。多くの企業は、セキュリティ対策のサイロ化を課題としていますので、XDRはその課題を解決できる有効な手段として提案していきます。ただ、XDRの導入をゴールとするのではなく、お客様のセキュリティロードマップの策定や実行など、全体を支援することが理想だと考えています。
米ドルではなく円
2月に発表した新パートナープログラム「Trellix Xtend Global Channel Partner Program」について教えてください。
これまで2社のパートナープログラムがありましたが、一つにまとまったことで、パートナーもビジネスがしやすくなるはずです。インセンティブの充実はもちろんですが、特徴の一つに、米ドルではなく日本円にしている点が挙げられます。米国企業の場合、米ドルでビジネスするケースが多いですが、為替が動く中で、パートナーはお客様に対してすぐ値上げを求めることは難しく、リスクを負うことになります。その部分をわれわれが持つことで、より販売しやすくなるはずですし、日本に合ったプログラムとして認知してもらえると思ってます。
現在は、既存パートナーに対して新プログラムを案内しています。マカフィーのパートナーにはFireEye製品、ファイア・アイのパートナーにはMcAfee製品といったように、両方のポートフォリオを販売できるように基盤をしっかり整えていきます。ハイタッチ営業で得た知見などをパートナーに共有する施策も行います。
Trellixブランドの認知拡大のためにどういったマーケティング活動をするのでしょうか。
11月に大きめのイベントを実施する予定です。その頃には、製品ラインアップはある程度そろっているはずなので、タイミング的にもいいと思います。また、アーリーアダプターとされる層のお客様に向けたラウンドテーブルを開催し、セキュリティ運用をはじめとしたさまざまな情報を提供していきます。