日本システム技術は2026年3月期の売上高が324億5900万円、営業利益が39億1100万円となり、15期連続の増収、11期連続の増益を達成した。安定した成長を続ける同社であるが、AI技術の発展に伴い、SIerとしての既存のビジネスモデルの持続に危機感は強い。中期経営計画(26~28年度)では、SIビジネスの再構築に加え、教育や医療、金融で培ってきた自社ブランドを磨き込み、保有する独自データの活用を軸にした変革と成長を目指している。平林卓社長は「オファリングビジネスの確立に挑む」と意気込む。
(取材・文/大畑直悠)
「ここが強み」を再定義
ビジネスの近況は。
事業全体として伸びており、特に物流向けが好調だった。スーパーマーケット系の顧客に対して、商品の仕入れや配達などを一貫して担うシステムを導入した。ほかの顧客にも応用できるノウハウを蓄積できたと考えている。ピンポイントのシステム改修やデジタル化にとどまらない支援の展開にもつながるだろう。
大学や医療向けの自社製品のビジネス状況は。
平林 卓 代表取締役社長執行役員
大学市場ではスクラッチでつくってきたシステムのリプレースでパッケージ製品が注目されている。大学経営支援パッケージ「GAKUENシリーズ」の競合優位性としてカスタマイズが抑えられる点や、バージョンアップが容易な点を評価されている。少子高齢化社会の中では、大学も経営を考える意識が高まっており、学生向けサービスの充実などに注力している。各大学が独自のカラーをいかに出すかを模索しているが、事務処理に費やしていた労力とコストを当社のシステムで削減し、学生生活の充実や就職支援、研究の推進などに集中できるように後押ししたい。
医療向けでは、目視による診療報酬明細(レセプト)確認のシステム化がもともとの事業で、健康保険組合や自治体などが顧客となる。レセプトデータに加え、健康診断の情報などをシステムに蓄積できるようにしたことで、ビッグデータとして製薬会社や研究機関が活用可能となっている。
自治体向けには、厚生労働省が推進する、レセプトなどの分析に基づく「データヘルス計画」の作成を支援している。レセプトの算定ミスや不正の発見で医療費を削減するだけではなく、人々の健康維持による医療費削減につながるようなデータ分析が現在求められている。
中期経営計画の狙いを聞く。
35年度までに売上高1000億円を目指す長期ビジョンを掲げており、その基盤づくりに取り組む期間だ。昨今ではAIの進化が著しく、これまでの受託開発をメインとした労働集約型のビジネスモデルは通用しなくなりつつある。これに対応するために事業ポートフォリオの再編を進め、オファリング型のビジネスの確立を目指している。
当社ではこれまで、業種・業界に関係なく、さまざまなシステムを提供してきたが、過去を振り返るとつくったらそれで終わりという場合が多く、ノウハウや知見がプロジェクトに携わった社員に蓄積されるだけだった。目下、取り組んでいるのは、社内における知見や技術の共有だ。組織の改編も進めており、事業部の垣根に妨げられない情報の共有を進め、「ここが強み」と言える資産を把握し、再定義できるようにしている。
変革に向けた踊り場的な1年に
初動の手応えは。
着実に前進している。ただ、もちろん容易なことではない。さまざまなアセットをきちんと切り分け、それを一つのかたちに整えて顧客にサービスとして提供するオファリングは、パッケージ事業の社員に比べ、SI事業の社員にはまだまだなじみが薄い。組織横断的にアセットを使いこなす仕組みの構築と実践を進めている。26年度は変革への踊り場的な時期になり、社員にとっては頭の痛い状況になるだろうが、これをしっかりと支え、全社一丸となって進めたい。
AI駆動開発も進めている。現状では各現場で活用が進んでいるものの、利用するツールなどに統一感が欠けていることで非効率な部分があり、専任の組織を立ち上げている。
課題は、コーディングが効率化されることで生まれる余力をいかに上流に回せるか、そして、AIを中心につくったシステムのレビューの体制をどのように構築するかだ。これには業界特有の事情にも精通した社員の経験が必要になる。AI活用の推進で若手社員から多様な経験を奪うことになっては強みを積み上げることもできなくなる。新人の教育や採用戦略も考慮しながら進めたい。
教育や医療など、重点領域の展望は。
AIの利用も含めたデータの多角的な分析と活用がテーマとなる。その一環として教育や医療に加え、金融への支援で取得しているデータを統合的に分析できる基盤となる「JAST統合プラットフォーム」の構築を進めている。例えば、各大学で得たデータから、どのような学生に休学や退学のリスクがあるかなどを当社側で分析し、アラートを出せるような機能をパッケージに組み込むといった取り組みだ。加えて医療や金融と教育のデータを横断的に分析することで、これまで見えなかった課題の把握につなげたい。当社にしかないデータの活用が進めば、ISVとの協業によるソリューションの展開にもつながると考えている。
社長就任から1年と少しが経過した。振り返りと今後の意気込みを。
新しいことづくめで、あっという間に1年が経過した印象だ。会社としても初めての取り組みが多かった。その一つが広報体制の強化だ。当社の変化を積極的に外部にも知ってもらいたい。
長期ビジョンの中で目指す企業像は「誰もが知る課題解決企業」だ。独立系SIerとして業種・業界を問わずビジネスを展開してきたが、縁の下の力持ちとして、取引のある顧客にだけ知られているのではだめだ。これまで通りの安定成長を目指すだけではなく、AI時代に合わせて大きく変革へ踏み出したい。