健常者が当たり前に使うコンピュータやインターネットも、視覚障害者にとっては高い壁がある。視覚障害者向けソフト開発を手がけるアメディアを立ち上げ、代表取締役に就いてから16年目。望月氏は、視覚障害者の社会参加をテクノロジーで支援し続けている。「障壁があるのはもちろんですけど、コンピュータとインターネットの普及は、視覚障害者の世界も広げたんです」
文字を音声として読み上げるソフトや、点字学習ソフトの開発など、「ITの凄さ」を視覚障害者も享受できるプロダクトを生み出してきた。今は会社の経営が忙しく、スタッフも増えたことからプログラムを書かなくなった。だが、創業時はわずか2人。自分で作り、売り、そしてサポートもした。語学を好み教師を志しながらも、「ITの限りない可能性」を信じ、数年の学校通いと独学で身に着けたプログラミング技術。「最初は全く興味がなかった」が、学び始めてからは楽しくて仕方がなかった。憶測でしかなかった可能性が確信に変わったのもこの時期。
「目の見えない人もウェブを使うんです。それだけは、みんなが頭に入れておいて欲しい」技術の目覚しい進歩が作り出す「いつでも・どこでも・誰にでも」のユビキタス社会。自らも全盲である視覚障害者の立場から、その実現に力を尽くす。
プロフィール
望月 優
(もちず きゆう)1958年生まれ、静岡県静岡市出身。74年、静岡県立静岡盲学校中学部卒業。77年、東京教育大学教育学部附属盲学校高等部に入学。81年3月、麗澤大学ドイツ語学科卒業。4月、千葉大学ドイツ文学専攻科入学。82年、麗澤高等学校で英語の非常勤講師となる。視覚障害者読書権保障協議会代表を務める。86年9月、国立職業リハビリテーションセンター電子計算機科入学。プログラミングの学習を本格的に開始。89年2月、株式会社アメディア設立。代表取締役に就任。