日本の高校に入学して2か月、山本契はアメリカに向かった。「縛りのない、大きな国に行ってみたい」という願望を実現し、砂漠のど真ん中にあるアリゾナ州の小さな町で1年間、プライベートスクールに通学する。その後、カリフォルニア州に移り、大学を中退するまで海の向こうで過ごした。23歳で日本に帰国するときには、英語が流暢なだけでなく、「自分の意見をきちんと主張し、口にしたことには責任をもって『Yes』が言える」というスキルを身につけていた。
ネットワーク機器メーカーの日本アバイアで、販売パートナー向けのソリューションマーケティングを担当する部門のマネージャーを務める山本は、ビデオ会議システム構築のプロジェクトで多忙な日々を送っている。大手証券会社から、8月中に受注できる見込みの大口案件が詰めの段階に入っているからだ。前職のネットマークスでシステムエンジニア(SE)に就き、以来、SEの畑を歩んできた山本にとっては、「お客様の立場で問題の解決策を考えて、先方の要求を米国本社に伝える」ことが、プロジェクトでの役割になっている。今は大口案件を受注できそうな時期が迫っており、このところ毎日のように電話で米国本社の責任者とディスカッションし、英語力を駆使して説得するのに必死だ。こうしたシーンで「Yes」が生きてくる。
クルマの世界では、複数の動力源をもつハイブリッドカーが注目を浴びている。山本は「人間の世界では僕自身がハイブリッドだ」と笑顔を見せる。日本とアメリカの両国の商慣習を熟知した強みを生かして、「日本から出発したビジネスを海外で展開したい」そうだ。(文中敬称略)
プロフィール
山本 契
(やまもと けい)1976年生まれの35歳。カルフォルニア州ロングビーチ市立ミリカン高等学校卒業。カルフォルニア州ロングビーチ市立ロングビーチシティカレッジを中退して帰国後、日本インターシステムズなど数社でヘルプデスクなどの仕事に携わる。2005年に、ネットマークスに入社し、システムエンジニア(SE)に。08年に、日本アバイアに入社する。SEを経て、11年4月に現職に就任。