濱田義之は通信/クラウドサービスのKVHで、サービス戦略を担当している。KVHの設立は、通信分野の規制緩和が進む1999年。濱田は第一期生として入社した。有名企業を辞めて、当時まだ名もないKVHに転職したのは、「自分で何か新しいことを手がけたかったから」。入社後は伝送技術を駆使した通信サービスに取り組んだ。
もともと国内外を結ぶ通信サービスをビジネスの主軸としてきたKVH。それだけに、手がけるクラウドサービスもまた「ライバル他社よりも通信の遅延がぐんと少なかったり、アジア成長国でのグローバルサービスを強化したりと、自社の強みを生かした差異化に重点を置いてきた」と話す。
濱田の場合、よいビジネスアイデアの源泉は「向学心」に尽きるという。KVHの本社は東京だが、資本はグローバルで、社員を国籍別でみると26か国にも達する。兄弟会社のコルトの本社はイギリスにあり、日本企業から転職してきた濱田は「仕事で必要となる英語をまず徹底的に勉強し直すところから始めた」。英会話教室では話の合う相手が見つからず、仕方なく英語の対訳本を買ってセンテンスを丸暗記。さらには社会人枠で東京工業大学大学院でMOT(技術マネジメント=MBAの技術版)を受講してきた。
英語力の向上で意思疎通できる相手を増やしたり、MOT課程で普通なら会えない異業種のキーパーソンと意見を交わしたりする日々。こうした経験や学習を「自分なりに咀嚼して、次のビジネスのアイデアを構成する“筋”の一つとして加えていく」。濱田が打ち出す新しいアイデアやサービス戦略は、「向学心」に基づく勉学や交流の成果に裏づけられている。(文中敬称略)
プロフィール
濱田 義之
濱田 義之(はまだ よしゆき)
1974年、東京都生まれ。1997年、日本大学理工学部電子工学科卒業。同年、住友電工通信エンジニアリングに入社。99年、KVHに入社。06年、サービス開発・ネットワーク計画部部長。10年、Telcoビジネスユニット兼CTOネットワーク技術部執行役員。11年5月より現職。