凄腕の営業マンだ。高瀬由照は、「昨年、初めてお客様に土下座した」と、こともなげに、さらりと口にする。その顧客とは、すでに関係を修復するどころか、以前よりも強固なつながりを構築できているからこそいえる言葉だ。
富山で創業し、現在も富山に本拠を置くエーティーワークスは、リンクと共同提供するホスティングサービス「at+link」で有名だが、近年、サーバーベンダーとしての存在感を急激に高めている。その原動力になったのは、自社製サーバーの販売を本格的に始めた2007年に、たった一人、東京で営業機能を立ち上げた高瀬の働きだ。
高校生活を野球に捧げて、卒業後はサーフィンにのめり込んだ。そろそろ腰を落ち着けようと入社した地元のエーティーワークスでは、サーバーの製造関連の仕事に従事。ようやく一人前に仕事ができるようになったと手応えを感じていた矢先、伊東孝悦社長に、「来月から東京に行って、サーバーを売ってくれ」といわれた。驚いたが、「行きます」と即答した。
最初のミッションは、サーバーを一人で年間1000台売ること。わずか3年で達成した。その極意を聞くと、「ITというデジタルの商材でも、結局は人と人とのつながりというアナログな部分で購入してもらっている。まずは自分自身を売り込んで、お客様と人間関係を構築することが大事」と話してくれた。一見、どぶ板営業のようだが、高瀬の思考そのものは合理的だ。「大きなクレームは、お客様の不満がたまって爆発したときに発生する。密に連絡できる関係をつくれば、クレーム化しそうな案件へのアンテナを高く張ることができる。仮にトラブルが発生しても、収束しやすくなる」。
こうして結果を出した高瀬は、営業部隊のリーダーとして、今日も現場の最前線に立って活発な動きをみせている。(文中敬称略)
プロフィール
高瀬 由照
高瀬 由照(たかせ よしてる)
1979年3月生まれ。富山市出身。不二越工業高校で3年間野球に打ち込んだ後、地元の印刷会社に就職。夜勤中心で、昼はサーフィンという生活を送る。2002年8月、エーティーワークスに入社。サーバーの製造、保守などを経験。2007年、営業部署の立ち上げに伴い、唯一の営業マンとして単身上京。年間1000台のサーバー販売を3年で達成する。現在は営業部隊の陣頭指揮を執る。