最後のコーナーを曲がると、42.195kmのゴールが見えた。ゴール横に表示されている経過タイムは「2時間59分XX秒」。あきらめかけていた“サブ3”にぎりぎり間に合いそうだ。悲鳴を上げるからだにムチを打ち、腿を上げ、腕を振り、最後の力を振り絞ってゴールを駆け抜けた。
今年2月16日に開催された京都マラソン2014に参加した一志達也。タイムは2時間59分33秒だった。フルマラソンで3時間を切る記録はサブ3と呼ばれる。多くの市民ランナーが目標としているものの、達成できるのは2%以下といわれるほどの難しい記録だ。
「ゴールが見えたときは泣いちゃった」。京都マラソンは一志にとってまだ3回目のフルマラソン。まさに快挙である。
一志がランニングを始めたのは、数年前にメタボと診断されたため。ダイエットが目的だった。「最初は1km走るのもつらい。それが3km、5kmと伸びていって、10kmを走ったのは人生初。そのときには感動すら覚えた」。走る距離が伸びると、からだが自然と引き締まってくる。体重は20kg以上も落ちた。脱メタボどころか、走るのが楽しくなって、今では月に300kmほど走るのが習慣になった。
日本IBMでは、技術営業職としてビッグデータ関連製品を担当している。「当社のソリューションを使えば、1日かかっていた処理が10分で終わるケースもある」。処理時間の短縮にはマラソンに似た達成感があるというが、決して一人で成し得るものではない。
「マラソンでは『頑張れ』という沿道の声援に何度も助けられた。職場でも誰かが頑張れと言ってくれるし、自分も積極的に声をかけるようになった。今は本当にいいチームで仕事ができている」。孤独な闘いを強いられるフルマラソンだが、走ることで彼が得たのは声援への感謝の気持ちとチームワークだった。(文中敬称略)
プロフィール
一志 達也
一志 達也(いちし たつや)
1974年11月3日生まれ。三重県伊勢市出身。国立高専卒業後、とくにデータベースを得意とするインフラ系のSEとして活動するかたわら、雑誌への寄稿や講演活動を行う。その後は日本オラクルやデルで製品マーケティングに従事。現在は日本IBMで技術営業職に従事。NetezzaやHadoopなどのビッグデータ関連製品を担当している。