松永紘は、実は海外へ渡航したことがない。英語はそこそこ話せるけれど、来年から教壇に立って話さなければならないポルトガル語は、これから勉強する。大丈夫、Rubyの知識もそういうふうにして身につけたのだから。
松永は来年の1月、青年海外協力隊のボランティアとして、モザンビークへ飛ぶ。アフリカ大陸の南東部に位置する旧ポルトガル植民地で、海の向こうにはマダガスカルがある。松永は現地で、教員を目指している大学生にパソコンの使い方やウェブアプリ開発などITの基礎を教える。休日は南半球のきれいな海岸に立って景色を眺め、新鮮な魚を食べることを、今から楽しみにしている。
IT、とくにオープンソース系のアプリ開発は、ボーダーレス化している。日本のユーザー企業も海外に向きつつある。「グローバル」の需要に対応できるエンジニアを育てなければならない。松永はそう捉え、青年海外協力隊のプログラムに応募した。自ら海外で経験を積み、2年後に日本へ帰ったら、それをエンジニア育成に生かす。松永がゼネットに入社した当初から考えてきたプランだ。
ベンチャー企業で、社員に自由に仕事をさせるゼネットには、2009年に新卒で入社した。当時、Rubyを使いこなせる開発者がいなくて、上司に「やってみろ」と命じられ、独学でRubyアソシエーションの認定資格を取得。これまで5人のRubyエンジニアを育てて、Ruby事業を軌道に乗せた。この秋からはポルトガル語の勉強に専念する。ITを取り巻く環境に関して、モザンビークは日本とどう違うのか。いろいろな発見に期待を寄せている。
今の年齢は29歳。「30歳になる前に必ず行く」と決めていた海外へ、もうすぐ旅立つ。(文中敬称略)
プロフィール
松永 紘
松永 紘(まつなが ひろし)
2009年、大学を卒業後、システム開発などを手がけるゼネットに入社。独学でオブジェクト指向スクリプト言語「Ruby」の知識を身につけ、Rubyのエンジニア育成に携わる。Rubyアソシエーションの最上位資格である「Gold」を取得している。15年1月から、青年海外協力隊のボランティアプログラムに参加し、2年にわたってモザンビーク共和国の大学でITの基礎を教える。