山口県の公立学校には、必ずといっていいほど吉田松陰の銅像が置かれている。「全国の学校がそうだと思っていた」と、山口県出身の田村郷司が言うほど、ご当地ではあたりまえの風景になっている。長州萩城下にあって、明治維新の立役者の多くを輩出した松下村塾は、吉田松陰が主宰した私塾として知られる。
田村が敬愛する高杉晋作も、松下村塾で学んだ。高杉晋作の精悍な顔つき、内に秘めた闘志。世が現代なら、仕事のできるビジネスパーソンであったと想像に難くないその姿に、田村は自分を重ね合わせる。
担当プロダクトのプランニングからセールスまで、田村は一人で何役もの仕事をこなす。大変だが、そこにやりがいを感じている。以前は大手企業に勤めていたが、大手ゆえに自分で動ける範囲が限られていた。AOSテクノロジーズに転職したのは、2014年の1月。一人で何役もこなすことが求められると知っての決断だった。
海外のユニークなソフトウェアを国内に広めるというAOSのビジネスモデルにも興味があった。送信メールの証明書発行サービス「i証明」は、スペイン製。EUでは国をまたぐ取引が多く、商慣習や規制の違いなどから、メールを「送った」「受け取っていない」が思わぬトラブルとなりかねない。「日本でも、いずれ送信メールの証明書が必要になる」と、市場開拓に闘志を燃やしている。
高杉晋作は、身分の分け隔てなく編成した「奇兵隊」で長州藩が躍進するきっかけをつくった。「AOSで奇兵隊を編成し、日本を変えたい」。語り口調や表情はとても柔らかで、奇兵隊のイメージにはほど遠いと感じていたが、高杉晋作の話題になると、田村の表情が一変した。(文中敬称略)
プロフィール
田村 郷司
田村 郷司(たむら さとし)
1978年生まれ、山口県出身。大学院修了後、NTTコミュニケーションズに入社。法人向けVPNサービスの企画部門、中央省庁向けのシステム導入などの担当部門を経験。その後、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)を経て、AOSテクノロジーズに入社。双方向SMS(Short Message Service)クラウドサービス「AOSSMS」や送信メールの証明書発行サービス「i証明」のプランニングおよびセールスを担当している。