「毎月一つは、新しい焼き肉店を開拓している」と笑顔を見せる。おいしい肉を食べると会話が弾む。楽しい話題で盛り上がるなか、育児に奮闘中の友人が口にした不満が気になった。「子育て支援サービスとか、いろいろあるけれど、役所に行って申請しないと受けられないし、そもそも自分が該当するのかどうかもわかりにくい」。
マイナンバー(社会保障・税番号)の運用が始まると、この問題が解消される。それを知って使命感を抱いた前田直子は、番号制度事業推進本部への異動を希望した。マイナンバー制度関連の事業を推進する部署である。
メディア志望の前田が就職先に選んだのは、テレビ局でもなければ新聞社でもなく、NECだった。「インターネットが当然の世界になる。ただ、一般的なウェブメディアよりも、NECというバックグラウンドがあったほうが幅広い活動ができるのではないか」。前田の思惑通り、ビッグローブのポータルサイト運営チームに配属され、タイアップ企画や広告の提案などを担当した。その後に異動した女性向けサイトの運営部門では、コンテンツ制作のために読者にヒアリングする機会が増えた。育児に奮闘中の友人との何気ない会話も、ついついヒアリング姿勢になっていたのかもしれない。
番号事業推進本部に異動して、前田はこう思った。「マイナンバー制度が目指すのは、公平かつ公正な社会を実現するということ。でも、そこが知られていない」。より多くの人に伝えたいと考えた前田は、マンガ解説本の制作にかかわるなど、メディアの経験を生かしている。もちろん、マイナンバーを理解してもらうのは簡単ではない。焼き肉店を月一で開拓するがごとく、慌てず、一歩ずつ歩を進めている。(文中敬称略)
プロフィール
前田 直子
前田 直子(まえだ なおこ)
2007年にNEC入社後、ビッグローブでウェブ広告の企画提案・営業支援や、スマートフォンアプリのマーケティングに従事。現在はNECの番号事業推進本部に所属。マイナンバーソリューションにおけるプロモーションを担当。