歴史が好きで、小学生の頃には偉人の伝記を読み、中学では司馬遼太郎を読破、高校時代は歴史書に親しんだ。とくに好きな歴史上の人物は上杉鷹山。江戸時代中期、多様な施策で米沢藩の財政難と向き合い、天明の大飢饉の際には一人の餓死者も出さずに乗り切るなど、その功績は現代においても語り継がれている。「企業の代表をしているが、自分が好きなのは権力側ではなくチャレンジングな立場。自分はずっと(鷹山のような)改革に挑む側にいたい」と、田向祐介は力を込める。

ゆえに、田向の行動原理に安定の追求はなく、常に挑戦。ヴェルクでは、システムの受託開発を主力とする一方で、自社サービスの企画開発にも積極的に取り組んでいる。とくに、クラウド型バックオフィス業務・経営管理システムの「board」は、同じベンチャー企業や小規模企業からの受けがよく、14年8月の本格提供開始以降、有料会員は350社を突破。その後も順調に顧客を獲得している。もともとは自分たちで使うために開発したシステムで、それがこれほど伸びるとは思わなかったようだが、「受託をやりながらサービスを立ち上げ、事業として成立させるということがやりたかった。その意味でboardは非常にうまくいった」と満足のようす。今後も受託開発に取り組みつつ、自社サービスをさらに伸ばしていく考えだ。
「仕事が趣味」と語る田向がいま興味を示しているのが、「資金を調達せずに、いかにブランディングしていくか」だという。「お金をかければ競争力がつき展開も早いのかもしれないが、それではおもしろくない。資金調達せずにどこまでやれるか、やってみたい」と、田向の挑戦に終わりはない。(文中敬称略)
プロフィール
田向 祐介
田向祐介(たむかい ゆうすけ)
1979年、千葉県生まれ。米テキサスクリスチャン大学を卒業後、2004年にフューチャーシステムコンサルティング(現:フューチャー)に入社。システム開発やコンサルティングに従事する。その後、インターネット広告のベンチャーであるサイテックに入社。10年、受託開発や自社サービスの「patto」や「board」を提供するヴェルクを創業、現在に至る。