流通 販売系SIer 川中
日本事務器 NECネクサ 大塚商会
NJC、まずは仮想機貸し出しから 日本事務器(NJC)は今年度(2009年3月期)から、情報システムの基盤構築・運用サービスを強化している。同社はSI(システム構築)事業のなかでもアプリケーション導入に強い中堅SIerで、システムのOSやミドルウェアなどを使ったシステム基盤構築・運用分野は手薄だった。今年度からそこに本腰を入れ始めた。
そのなかでキープロダクトとなるのが「仮想化」。仮想化ソフトウェア「VMware」を使った「仮想化ソリューション」を戦略的なサービスとして大々的にPRする。物理的にサーバー台数を削減することで、運用コストを低減できるのが仮想化のメリット。主力事業であるサーバーの販売台数が減少するマイナス要素も潜むが、ユーザー企業からの強い要望を感じ取り、積極策に打って出ることにした。
NJCがターゲットとする中堅・中小企業(SMB)のユーザーは、仮想化を「敷居が高い」と感じる傾向がある。そこで、本格的な導入前のサービスとして、最大1か月間、仮想化システムを貸し出して評価してもらう「トライアルサービス」と、仮想化で何台のサーバーを集約できるか試算する「アセスメントサービス」をメニュー化した。キャンペーン価格で“値頃感”を訴求し、ユーザー企業の獲得を目指す。
同社の仮想化に対する取り組みは、ユーザー企業のシステム仮想化だけに限らない。自社のSaaS型サービス基盤にも有効活用している。SaaS型サービスを中心としたITサービス子会社「NJCネットコミュニケーションズ」を5年前に設立。近い将来に到来するであろう「クラウドコンピューティング時代」に備えて、サービスビジネスを着々と育み、そのキーコンポーネントとして「仮想化」を重要視するというわけだ。全売上高に占めるハードウェア販売の比率の高い販売系SIerにあって、かなり先進的だ。
NECネクサ、SaaS基盤の部品に採用 SMBを主要顧客ターゲットとしているNECネクサソリューションズ(NECネクサ)も仮想化事業を強化している。ユーザー企業向けには「運用コスト削減」を謳い文句にし、「VMware」を活用した仮想化ソリューションを提案。NJCと同様に自社のASP・SaaS型サービスのインフラとして仮想化ツールを取り入れている。
NECネクサは今年度(09年3月期)期初にSMB向けのASP・SaaS型サービス事業で43億円を売り上げる計画を立てた。顧客の業績に合わせてサービス価格も変動する「業績連動型」サービスなど目新しいサービスを投入。それらのサービスを支える自社システムには仮想化を導入した。昨年5月、日本オラクルの仮想化製品「Oracle VM」を自社ASP・SaaS型サービスの基盤部品とする方針を決定済みだ。
販売系SIerはユーザー企業への「商材」としてだけでなく、自社のSaaSサービス基盤に仮想化技術を取り入れ、「戦略的な部品」として活用する動きを始めているのだ。
大塚商会、クラウドへワンマイル戦略 大塚商会はヴイエムウェアの仮想化製品が「普及期」に突入した08年2月、仮想化ソフト「VMware」のSE(システム・エンジニア)の育成を開始。同年10月にはマイクロソフトの「Hyper─V」リリースと同時に「導入アドバイザー」の認定資格者増強を宣言するなど、ユーザー企業の「サーバーを仮想化したい」という潜在ニーズを早くから掘り起こしていた。
現段階で同資格者とヴイエムウェアの資格者を含め400人以上を確保。「予定より前倒しして、負荷の見積りなど一定の知識とノウハウ、アプリケーションの動作確認環境を支援できる人材を揃えた」(中本明彦・サーバシンクライアントプロモーショングループ課長)と、他社より早く大企業から中小企業までを網羅した担当者を全国で配置したと自負する。
同社は今年1月下旬、NEC、マイクロソフトの3社で中小企業向けにタワー型サーバーで手軽にコスト削減を実現する仮想化「1台2役サーバパック」を開発、3月から販売開始する。これまで、SI(システム構築)事業では機器販売を主に展開してきた同社だが、「クラウド時代への『ラストワンマイル』だ」(同)と、仮想化事業の展開を積極化している。早期に同社のビジネスパートナー(BP)が「売れる」仕組みを整備する。
大塚商会の大塚裕司社長は、「サーバーは今年も売れませんね」との問いかけに「売れるはずだ」と答えた。その返答の意味を解釈すると、「サーバーを集約するうえで『物理サーバー』には、CPUなどに高いパフォーマンスが必要になる。既存サーバーで対応できないユーザー企業が多いため、一時的にだがサーバー・リプレースが発生する」ということだろう。
また、仮想化を切り口に「塩漬け」されたサーバーを集約するだけでも大きな需要とストックが生まれるというのが販売系SIerが仮想化に力を入れる理由でもある。
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