一方、リコーグループの運用・保守会社であるリコーテクノシステムズ(RTS)も、「Windows 7」に高い期待を寄せている。岡島秀典・取締役専務執行役員ITサービスセクター長は、「ここ数年滞っていた企業の新OSへの移行需要が、『Windows 7』の登場によって掘り起こせる。実ビジネスはまだこれからだが、引き合いが多くある」と説明する。旧OSから「Windows 7」への移行メリットを訴求するプランを打ち出し、旧OSにはない管理機能やセキュリティ機能を前面に押し出して、需要喚起を狙う。
新OSの登場後、実際にパソコンの販売に結びつく時期は、法人市場は個人市場よりも遅れてやってくる。発売から半年ほど後に需要が本格化するというのが通例。個人ユーザーとは異なり、移行のための評価・検証に時間がかかるためだ。「半年後の需要本格化」理論でいけば、その期間が過ぎた今が最初の拡販期に当たる。
ライセンス販売
互換性検証できれば普及必至
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ウチダスペクトラム 紀平克哉・執行役員 |
Windowsライセンスの国内大手リセラーであるウチダスペクトラムも、「Windows 7」の販売に手応えを感じている1社だ。「Windows 7」導入に向けた検討や既存業務アプリケーションとの互換性などの検証に着手する企業が増加中という。同社では「早ければ2010年4月から一部ユーザー企業で『Windows 7』の大型導入が始まる」(紀平克哉・執行役員)と、見込み案件を踏まえ、移行増は必至と見る。
また、新規購入分のパソコンの多くは「Windows 7」がプリインストールされ、すでに既存パソコンに搭載のXPやVistaとの混在が始まっている。複数OSが混在することで運用管理の効率が落ちることが予想され、「ユーザー企業では、『Windows 7』に統一する動きが出始めている」(紀平執行役員)と話す。だが、企業ユーザー社内における「Windows 7」の比率はまだ高くはない。ウチダスペクトラムは、年内は段階的に「Windows 7」の比率が高まり、ある一定の比率に達した時点で急速な普及期に突入すると予測。この「臨界点」には2010年度末(11年3月期)から2011年度前半にかけて到達すると分析する。企業内のパソコンOSにおける「Windows 7」シェアが3~4割に達した頃という。
「Windows 7」導入の最大の課題は、アプリケーションの互換性と運用コストの削減だ。現在、企業ユーザーが使うパソコンOSの8割方がXP以前のバージョンであり、アプリケーションによっては「Windows 7」で完全に動作しないケースが少なからずある。そこでウチダスペクトラムは、マイクロソフトの仮想化技術を駆使し、アプリケーションの互換性を大幅に高めるサービスを積極的に提案することで受注拡大を狙う方針だ。
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マイクロソフト 野中智史マネージャー |
システム全体の運用コスト削減に関しては、従来のクライアント/サーバー(C/S)型からクラウド方式に移行することで費用を抑制する動きが本格化するとの見方が根強くある。具体的には、サーバー側にクライアントOSを集約するサーバーベースの「デスクトップの仮想化」方式を指す。この流れについて、マイクロソフトは、「パソコンのOSごとサーバーベースコンピューティング化する動きはさほど大きくない」(野中智史・Windows Server製品部エグゼクティブプロダクトマネージャー)と心配していない。ウチダスペクトラムの紀平執行役員も、「アプリケーションの仮想化で十分に対応できる」と、これまでの使い慣れたC/S型とアプリケーションの仮想化の「ハイブリット方式」で運用コストを十分削減することができ、これが主流になると指摘している。
「Windows 7」の拡販競争では、仮想化技術を駆使したアプリケーションの互換性の確保とパソコンの運用コスト削減をどう実現できるかが勝敗の分かれ目になりそうだ。
ライセンス流通卸
XPユーザー、買い替え加速
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ソフトバンクBB 菅野信義・統括部長 |
ソフトウェア流通卸最大手のソフトバンクBBでは、「Windows 7」のライセンス販売が好調に推移している。2009年10月22日に家電量販店での発売時には、数日間でVistaに比べ1.5倍の販売量を記録した。
3か月後のいまもその勢いは衰えず、1.5倍かそれ以上の売れ行きという。
同社の菅野信義・MD第2統括部統括部長は「『Windows 7』の法人需要は予想を上回っている。本格的な普及までには、半年程度かかるとみていたが、立ち上がりは非常に早い」と、すでに好感触を得ている。
これだけ好調な背景を菅野統括部長は「『Windows 7』の投入がパソコンの買い替え時期に当たったことと、XPユーザーが『Windows 7』の購入を積極化していることがある」と分析している。また、「Windows 7」が周辺機器と互換性が高いことや、マイクロソフトがWebサイトを使った診断・導入サービスなどを展開していることも普及の追い風になっているという。
現在の購入ユーザーは、パソコン販売を行っているSIerの見解と同様、中堅・中小企業が中心だ。ソフトバンクBBが取引するSIerや事務機系販社などを経由して購入しているようだ。ユーザー企業のシステム担当者が社内システムとの連携性などを検証するために購入するケースが多く、1社あたり10ライセンス程度を買い求めている。
ソフトバンクBBでは、好調な「Windows 7」が“呼び水”となり、取り扱うアプリケーションソフトの販売も加速することに期待をかけている。「『Windows 7』が売れるほどアプリケーション販売が伸び、コンサルティングやSI(システム構築)へとビジネスチャンスが拡大する。『Windows 7』を市場活性化の起爆剤にしたい」(菅野統括部長)と、想定以上の需要拡大に意気が上がる。
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