検証2 KDDI
SMBにSaaS導入を促進
販社網の確立を目指す
KDDIは、アプリケーションのSaaS化が可能なプラットフォーム「Business Port」への参加プログラムとして、「Business Port Support Program」を提供しており、ISVを着々とパートナーとして確保しつつある。ユーザー企業については、中堅・中小企業(SMB)を中心に導入実績を積み重ねている。また、今後は「Business Port」を扱う販売代理店網の構築を本格化する方針。PaaSベンダーとの協業も模索するという計画をもっている。
7社のアプリサービスをSaaS化
100社以上がプログラムに参加  |
| KDDIの傍島健友グループリーダーは、「Business Port Support Program」について、「アライアンス戦略と位置づけている」とコメントする |
アプリケーションのSaaS化が可能な「Business Port Support Program」で提供可能なアプリケーション数は、KDDIのサービスを含めて現時点で8種類。他社と比べると少ないが、「実はプログラム参加のISV数は100社以上に達している」と、ソリューション戦略本部アプリケーション推進部1グループの傍島健友・グループリーダーはアピールする。「Business Port」を活用すれば迅速にSaaS化できるものの、参加して短い期間で提供しないのは理由があるという。それは、プログラムの登録からサービス開始までの流れにある。同社では、アプリケーションのSaaS化が目的ではなく、「プログラム参加のISVと共同で新しいビジネスモデルを創造することを狙いとしている」からだ。つまり、売れるモデルを確立した段階でサービスとして提供しているのだ。
「単にSaaS化すれば売れるというわけではない。想定する対象ユーザーや売り方などを踏まえてサービス提供することが重要」と、傍島グループリーダーは訴えている。実際、ユーザー企業数については、「提供開始から順調に伸びている」と言い切る。しかも、問い合わせに関しては「昨年の4~5倍に膨れ上がっている」そうだ。SaaS化できるプラットフォームを提供するのではなく、「パートナーシップを深めて、新しい市場を創造する」ことが目的。また、SaaSビジネス特有のレベニューシェア(決めておいた配分率で利益を分け合う方式)であることから、「SaaS化して市場に投入したパートナーの多くがビジネスメリットが高いと意識してくれている」。しかも、SaaSを手始めにKDDIの回線を売るといったケースも出てきているようだ。
複数の角度で販社網を形成
他業界でパートナーシップも KDDIでは、ISVとのパートナーシップ深耕で着々とビジネス拡大を図っているわけだが課題も残っている。傍島グループリーダーは、「さらに販売網を広げること」と打ち明ける。現段階では、アプリケーションをSaaS化したISVが自社の販売網を通じて拡販しているケースが多く、ほかにPBXや携帯電話などKDDIの販社が提供している。ただ、「メインユーザーのSMBに接しているのは、ITベンダーに限ったわけではない。そのため、今後は他業界を含めて販社網を形成していきたい」という考えを示している。具体的には今後詰めていくが、例えば金融機関や会計士、税理士などが考えられる。「さまざまな角度からSaaSを浸透させていく」方針だ。
PaaSを提供するITベンダーとの競争については、「競合することは少ないのではないか」とみている。ただ、同社から積極的にPaaSベンダーに対してDC連携などを提案するわけではなく、「あくまでも、双方のメリットが一致した時点で協業していきたい」という姿勢だ。これは、「Business Port Support Program」のISVとともにビジネスプランを創出しているためで、あくまでもプログラム参加のISVがメリットになることを追求しているからだ。また、販社網を広げようとしていることも関係しているといえそうだ。KDDIとPaaSベンダー、プログラムに参加するISV、SaaS販社ともに拡大する仕組みが構築できれば、大きなビジネスチャンスになる可能性が高い。
【KDDIパートナーの動向】エイ・アイ・エス
プログラム参加で知名度が向上
「Business Port」に集約へ  |
| 冨士正寛・副部長 |
販売会計システムなどを開発するエイ・アイ・エスは、KDDIの「Business Port Support Program」に参加して堅調にユーザー企業を増やしている。昨年夏に「Business Port」上で販売管理のSaaSサービス「ちゃっかりストア」を提供開始。販売管理システム事業部の冨士正寛・副部長は、「KDDIのブランド力を活用し、知名度の向上につなげている」という。
同社は、02年から自社でDCを用意してASPサービスを提供。大手酒造メーカーを手始めに、酒販店や小売店などをユーザー企業として獲得してきた。販路は直販が中心で、なかには「小規模店舗の場合、当社の営業担当者が直接訪問してASPサービスを提案しても理解してもらえないケースがあった」と、冨士副部長は振り返る。そこで、自社でのサービス提供に加えて、KDDIのパートナープログラムに参加するという、いわば両輪で事業拡大に踏み切ることを決断。今では、「POSレジを設置していないなど、IT化が不十分な店舗でも、KDDIという名前を出すだけで信頼を得られることがある」としている。
販売については、引き続き直販を進めているほか、POSレジメーカーとのアライアンスで機器とASP/SaaSのセットで売るといった体制を整えた。ほかには、KDDIが提供しているバーコードリーダ搭載の携帯電話と組み合わせた提案も行っている。
「Business Port」を活用したSaaS提供が伸びていることから、「今後は自社でDCを保有せず、KDDIのDC経由でのビジネス展開に集約することを検討している」という。また、販売強化策については、「KDDIが開拓している販路を経由して拡販していくことも模索していきたい」という考えを示している。
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