今求められる
営業支援システム
ルートセールス的な要素を支援 もともとイーシステムは、オラクルの「Siebel CRM」を拡販してきた経緯があり、2001年にヘラクラスに上場した。「当時『Siebel』がよく売れていた。それもほとんどが製薬メーカーだった。ユーザー情報は整備されており、すでに3巡目の仕組みになっている」(市村部長)。
「パラダイムシフトが起きると、少品種の医薬品で莫大な利益を得ていた時代から多品種少量にシフトする」(同)。従来とは何が違うのか。特定の医師とじっくり深く膝を突き合わせるシーンから、一日に数多くの医療機関に訪問できるルートセールス的な要素を支援していく仕組みにニーズが変化しているのだという。
同社が提供する「Dynamics CRM」は、市場ニーズの変化に対応するため、2009年11月にリリースしたCRM製品だ。同製品は、部門スケジュールが容易に立てられるほか、変更が簡単なのが特徴。営業効率を高めることに主眼を置いている。マイクロソフト「Microsoft Office」との親和性が高く、「Microsoft Office Outlook」との連携による情報共有や「Microsoft Office Excel」のファイルとのリアルタイム連携などが可能だ。「Dynamics CRM」は、見積もり機能を標準搭載しており、開発コストも削減できるメリットがある。千根シニアコンサルタントは、MRの営業活動の負荷を軽減して簡便化できると胸を張る。今後は、データレポーティングツールを強化していく意向だ。
「安全性」にビジネスチャンス 日本は、諸外国に比べて新薬開発後にその新薬を患者に投じたり、海外での新薬を国内承認したりするまでの時間差であるドラッグラグが大きいとされる。近年、厚生労働省は優先品目の承認を進め、ドラッグラグ解消に努めている。ただし、徹底した適正使用の指導により、市販後の安全対策強化を図ってきた。
そんななか、独立系SIerのシーエーシーは、安全性情報管理に着目した医薬品開発業務受託機関(CRO)業務に注力する意向を示している。「海外も含め、副作用情報を報告する必要がある」(高橋亘・医薬BTOユニット参与)として、製造販売後調査や安全性情報の業務委託に力を入れる。
製造・販売のフェーズは、「ソリューションという意味合いが強い」ため、パートナービジネスを深耕したい考えだ。実消化・営業支援システム構築を手掛けるほか、自社パッケージのSFA製品「MR-Navi Value」の拡販を目指す。高橋参与は、MR業務の統合支援ソリューションの強化策を「販売活動が主だったのを見直し、安全性をフォローしていく」とした。同社は、市販後の情報伝達や副作用・症例フォロー、訪問管理の統合などの機能を、「MR-Navi Value」に追加する計画。製造販売後調査支援システム「ClipCapture」と合わせ、「製造と販売の両方から見られるようにしていく」という。
従来は、大型の医薬品で莫大な利益を得ていたが、近年は数少ない高い医薬品を販売するようになり、安全性が求められるようになった。「フォローがよいことが薬の価値を上げる」。ジェネリック医薬品メーカーに対しては、まずは「MR-Navi Value」の導入を推進する方針だ。
製造販売後業務の支援ソリューションも一新する。従来展開してきた製造販売後調査用EDCシステム「ClipCapture」の機能強化を図るほか、有害事象(薬の使用者に発生した医学的に好ましくない事象)の自発報告や詳細調査、ポータル増強、市販直後調査「Vigilia」(ヴィジリア)、「MR-Navi Value」など他システムとの連携を見込む。高橋参与は、「CROと協業を進めたい」と話す。
BI強化、徹底して自前主義貫く  |
セジデムデンドライト 川崎信也氏 |
前出のセジデムデンドライトは、グローバル市場でのシェアが35%に上る。国内でも40%のシェアを占める。同社の川崎社長は、「他社と異なるのは、医薬品業界に特化している点。日本法人には160名の人員がおり、これだけCRM専任で事業展開している企業はないのではないか」と話す。同社は、システムの企画から導入・運用・保守までを一貫して手掛ける。
がんや糖尿病、脳卒中、心筋梗塞など、専門分野に特化したMRの領域性が強まっているなか、「同じ医師に何人ものMRが訪問するケースが生じてきた」と、川崎社長は指摘する。こうした問題の解消には、「Mobile IntelligenceKey Account Management」(MI KAM)を利用し、活動情報を一元化し共有することで対処。キーアカウントに対する目標設定や社内タスクの全社レベルでの一元管理、キーパーソンの関係性やニーズの把握に応じたアクションなどが可能となっている。
最近、事業として強化しているのがビジネスインテリジェンス(BI)ソリューションだ。「数をこなせば済んだ」時代から、MR業務に「いろいろな角度から分析する必要性」が生じ、BIが注目されているというのだ。受発注データや企業間の商取引情報のデータ交換を、製薬メーカーと医薬品卸がオンライン化した「医薬品業界データ交換システム」(JD・NET=Japan Drug NETwork)や調査会社などの調査資料上のデータ分析など、「一般のBIとは違った解析が求められる」。
2010年4月1日に、グローバル規模で新設した「アナリティクス」部門は、BIソリューションを強化することを目的としている。BIツールである「Mobile Intelligence Analyzer」と「Xtelligence」をベースに、BIを使った分析レポートサービスを提供。メーカーの要望に合わせ、オンプレミスでも導入可能だが、「基本的にはSaaSで提供する」方針だ。サービスは、同社のデータセンター(DC)経由で提供し、SaaSシングルテナント・マルチテナントの「SaaSモデル」のほか、「サーバー設置モデル」の選択肢を用意する。ちなみにアライアンスなどによるパートナービジネスは、「ゼロではない」。すべて自前で用意するのが原則だ。「今のところはユーザー企業に直接アプローチしていく」姿勢で、競合他社とは一線を画す。
業務連携に向け、オープン化  |
日本オラクル 前田全紀氏 |
マーケティングやMR業務など、それぞれが独立した業務として成り立ち、「最終的に一つの薬剤あるいは疾患領域として全体をみている日本のメーカーはまだ少ない」。日本オラクルの前田全紀・医療ライフサイエンスインダストリービジネスユニット日本&アジア太平洋シニア・マネージャーが提案する解決策はこうだ。「今現在使える既存資産は残し、ビジネスモデルが変わったら新しくしていけばよい。どう連携させていくかがポイントで、キーワードはオープン化だ」。
日本オラクルの強みは、BIツールやSCMなど営業支援向けアプリケーション以外にも「一通りもっている」こと。アプリケーションを連携させるサービス指向アーキテクチャ(SOA)ソリューションを揃えているのも優位な点だ。なお、同社が投入を控えている次期製品は、「簡単なユーザーインタフェース(UI)を意識した」という。
「SAPは、先発医薬品メーカーにほぼ導入されている」。事実、大手医薬品メーカーの大半はすでにSAPユーザーだ。今後需要が見込めるのは、ERPパッケージにひもづけたSCMやR&D、営業支援など、横串の業務連携に向けたソリューション。前田シニア・マネージャーは、「この3年くらいで、日本のメーカー向けにテンプレートを作ってきたが、パートナー企業に訴求できていない」と反省する。以前は、日本の独自の規制に合致していないケースがあったというのだ。今後は、改めてパートナー企業へのアピールを強化する考えだ。
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