営業支援のあり方
大きく変化へ
加速化するクラウドの潮流  |
アクセンチュア 永田満氏 |
「グローバル層のプログラムは、4~5年のサイクルで一巡する。ITとしては、一つの完成形をみるのではないか。それからは、営業・マーケティングの分野が盛り上がるだろう。SFAとは異なる観点で、行動管理から後方支援センターの役割を担うようになる」。アクセンチュアの製造・流通本部ヘルス&ライフサイエンスグループ統括パートナー・永田満氏は、営業・マーケティングの分野は非効率だとして、デジタルコンテンツ化やe-marketingの分野が勃興するとみている。
これから盛り上がるという営業支援業務ソリューション。とくにクラウド・コンピューティングの利用が期待できそうである。「ITコンセプトに、ぴんとこない経営者が多いが、クラウドに対しては感度が高い場合が多い」(永田氏)という。
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シーエーシー 高橋亘氏 |
シーエーシーは、CRA活動支援システムのほか「Vigilia」と「ClipCapture」を同社のDCを利用してクラウドで提供する。運用・保守で、パートナー企業とのアライアンスも検討したが、なおざりになってきたという。まずは、「営業・販売系でクラウド提供を考えている」(高橋参与)段階だ。
「10年以上も前からASPサービスを提供してきた」。こう自負するセジデムデンドライトの川崎社長は、大手メーカーでSaaS利用を検討しているケースが目立つ、と現状を説明する。2010年問題で大きな収益が見込めないため、なるべく無駄な投資をせず、IT資産を所有する必要がないことやインフラの整備が進み、タイムラグの心配がなくなったことがSaaS利用の後押しとなっている、と分析する。
日本オラクルの前田シニア・マネージャーは、オンプレミスとSaaSでニーズが異なると、指摘する。「戦略の策定や分析が必要なマーケティングやチャネル施策を考える場合、本社でマネジメントし、現場に落としていく」。一方、ある程度MRによる医療施設への訪問がモニターできたりする場合はSaaSで対応する。つまりユーザー企業に対しては、複合的な使い方でIT投資を促す考えだ。ジェネリック医薬品メーカーは、「まずはSaaSで」という選択肢が多いとみる。
「CI」を売り込む  |
アプライドナレッジ 小島政行氏 |
エンタープライズブログ&Wiki「TeamPage」やMR支援ソリューション「SQC for MR 」などを販売しているアプライドナレッジ。Competitive Intelligence(CI)の運用の必要性を説く。小島政行代表取締役は、「CIという新しい市場を開拓していきたい」と語る。CIは、組織内部でバラバラに偏在する情報を部門間で共有し、企業戦略の意思決定に活かしていこうとする取り組みである。CI活動を推進するためには、クローリング・エンジンやエンタープライズ検索エンジンの活用による情報共有が肝になるという。
「TeamPage」のポータル画面には、プロジェクトの最新記事を掲載し、メンバー間でファイルを添付したり、コメントしたりできる。また、ラベルによる情報の抽出が可能となっており、ワンクリックで欲しい情報を参照できる。
同社は、CIを軸に据えながら、「PKG」と「CRM」という業界キーワードを創作した。「PKG」は、P(特許=Patent)、K(知識管理=Knowledge management)、G(後発医薬品=Generic)の略。関連パテントのデータ・クラスタリングやグローバル化に伴うナレッジリスク管理、ジェネリック関連のIT投資の増大のことを指す。一方「CRM」は、C(競合=Competitive)、R(規制=Regulation)、M(マーケティングあるいはMR=Marketing or MR)の略。競業他社の情報分析や規制情報の収集、医薬品の市場効果・市販後調査を指す内容となっている。いずれにしても、同社が主張するのは、CIを軸に「PKG」と「CRM」を踏まえた企業戦略の策定が重要だということである。
エピローグ
次の需要に備えることが必要 大手医薬品メーカーに限らず、医薬品業界は、グローバル化の波にさらされ、早急な対応を迫られている。IFRSへの対応やM&Aの活発化は、システム統合やERPのグローバル連携の需要を引き起こした。厚生労働省の「コンピュータ化システムバリデーションガイドライン」など、グローバルレベルでの規制要件や業界標準に準拠したシステムのライフサイクル管理も求められている。そのほか特筆すべきは、MR業務の変化に伴う、モバイルを有効活用した販促活動や市販後調査、医薬品情報提供などの強化だろう。
グローバル統合でカギになるのは、いかに海外ネットワークを構築し、海外展開するメーカーのサポートができるかということだ。
これは、中堅・中小企業(SMB)にとっても他人事ではない。現在はオフコンからのリプレース需要があるが、一巡した後の次の需要に備える必要がある。その一つが中堅企業でも進むM&Aに伴うグローバル統合であり、もう一つはクラウド・コンピューティングの潮流である。
MR業務は、iPadなどタブレットPCが続々と登場していくことによって、販促活動が大きく効率化される可能性がある。紙資材の大幅な削減やリッチコンテンツの多用によるプレゼンテーションツールとしての有効性など、多くが期待できる。外資系が先行して大量の導入が進むかもしれない。
医薬品業界は、数年前から2010年問題が指摘されてきた。大きな変化の渦中にあるからこそ、ベンダー各社にとっては、ビジネスチャンスになるのだ。