リーマン・ショック前の2008年の水準には若干及ばないが、販売台数が急回復したx86サーバー。そのなかで、ブレード型がジワジワと存在感を示し始めている。省エネ、省スペース、そして効率運用──。ブレード型には、タワー型やラック型にはない魅力がある。ユーザーの認知も高まり、メーカーの販売支援策も充実してきた。ブームが去った今こそ、SIerにとっては、他社に差をつける時期だ。
ジワジワと普及するブレード 2010年度(10年4月~11年3月)のx86サーバーの国内出荷台数は、前年度からプラスに転じたようだ。IT調査会社のノークリサーチが、2010年12月14日に発表した調査レポートによると、2010年度の出荷台数予測は前年度比7.5%増の54万2244台。2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震が起きる前の数字であり、実際には減少する可能性はあるが、「それでもプラス成長は間違いない」(ノークリサーチの伊嶋謙二社長)。
x86サーバーの過去10年の推移をみると、情報システムのオープン化で需要が強まり、07年度まで一貫してプラス成長を果たしてきた。07年度には55万330台という過去最高の出荷台数を記録している。しかし、08年、09年度は2年連続で前年度の実績を下回っている。リーマン・ショックの影響で、ユーザー企業はIT投資を抑制するために情報システムの新規開発を止め、既存システムを延命したことが響いた。そして、10年度、止まっていたユーザー企業のIT投資が復活し、プラス成長に転じた。これがx86サーバー市場の軌跡である(図1参照)。
x86サーバー市場を知るための別の観点としては、形状別の出荷台数がある。x86サーバーには、「タワー」「ラックマウント(ラック)」「ブレード」の3種類に分けられる。タワーとはデスクトップパソコンの本体のような形状で、床置きするタイプ。ラックは専用の棚に格納する薄型の形状で、データセンター(DC)や企業内のサーバールームで利用されることが多い。そして、「ブレード」がエンクロージャと呼ばれる特殊なきょう体に薄型のサーバー(ブレード)を複数差し込めるタイプで、大規模な情報システムで利用されることが多い。この3種類の出荷台数は、それぞれこの10年ほどの間に変化している。
図2には、全x86サーバーの出荷台数における形状別の構成比率を示した。タワー型が減少し、ラック型が伸びている。2010年度の出荷見込みでは50%を超える見込みだ。その一方で、見逃せない存在がブレードである。ブレードは03年度では全体の3.0%にも満たなかったが、09年度にはその4倍強の13.1%に増加し、10年度は13.5%に到達する見込みだ。ジワジワではあるものの、その存在感を示し始めている(図2参照)。
関心薄れた今がチャンス ただ、ブレードサーバーの普及については、懐疑的な意見をもつIT企業関係者は少なくない。ブレードの登場は約10年前にさかのぼる。特殊なきょう体に専用サーバーを差し込むことによる省スペース化と省電力の実現、専用のきょう体に入るサーバーを集中管理することでもたらされる運用管理の効率化は、ラックやタワー型にはない魅力。サーバーメーカーは、続々とブレードサーバーの開発に乗り出し、「将来はブレードが主流になる」とPRした。
05年当時のある調査会社の資料には、10年にはブレードの構成比率は30%に達するという予測データもあった。しかし、現実にはブレードはそこまでには普及していない。普及しなかった理由の一つとして、それを売るSIerなどのIT企業に、ブレードを売るための知識やスキルが乏しかったことが挙げられる。それは、メーカーがIT企業に対して、売るための支援策を用意できていなかった点にあるとも指摘することができる。
だが、ノークリサーチの伊嶋社長は、「以前のようにブレードに対する過度な期待は抱かないほうがいい」と前置きしながらも、「ブレードが適しているシステムは確実に存在する。急速にではないものの、着実に普及していく」と予測している。
ブレードについては、「期待を裏切られた」という感触をもっているIT企業が少なくない。したがって、現状ではどのIT企業もそれほど商談に積極活用していない印象がある。ただ、商談のネックとなっていた価格も下がっており、ラインアップも充実してきた。そして、メーカーの販売支援策も整っている。IT企業にとっては、システム開発の提案の際、ブレードを取り込むことで競合他社に提案に差をつけられるはずだ。ブレードに対する意識が薄まっている今が、逆にチャンスといえるだろう。
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