急成長を遂げる
専業ベンダー サクセスファクターズジャパン×PWC
買収戦略でスイート化を強力に推進
サクセスファクターズジャパンは、EPMからスタートして、近年はM&Aを繰り返してきた。木下雄介社長は、「LMSでトップベンダーの米Plateauを買収した。ERPベンダーが提供している人事管理の分野でもEmployee Centralをリリースし、市場を広げていく」と説明する。
M&A戦略で特筆すべきは、ソーシャルネットワークの積極的な活用だ。「コアの部分は自社で開発していくが、ビジネスインテリジェンス(BI)やソーシャルネットワークなどの分野では買収を進め、スイート化している」(木下社長)。企業内ソーシャルソフトウェアベンダーのCubeTreeやソーシャルラーニングベンダーのJambokなどを取り込むことによって、企業内コラボレーションを促進。従業員の満足度の向上や売り上げ拡大につなげることができるとしている。
同社がSaaS型で提供している「Business Execution Software」のパートナーには、PWCやアクセンチュア、NECなどの顔ぶれが揃う。
PWCの臼井ディレクターは、「国内企業は外資系企業と異なり、クイックスタートでまずやってみるというケースが多い。サクセスファクターズのソリューションは、こうしたニーズとの親和性が高い。というのも、グローバルでトップシェア、安くて導入が早い、統合型スイートで必要な機能が揃っているという三つのポイントがあるからだ」と評価する。一方で、SAPなどのパートナーでもあり、「例えばSAP ERPが動作しているのであれば、SAPのタレントマネジメントを導入することもある」(臼井ディレクター)。
PWCでは、従業員140人の中小企業への導入実績もある。臼井ディレクターは、「プレゼンテーションの30分後には社長が導入を決めていた」と苦笑する。
サムトータル・システムズ
SMB市場の開拓に着手
サムトータル・システムズは、LMSに強みをもつベンダーだ。同社のLMSの特徴はドメイン管理にある。管理者は、柔軟なグループ分けによる複数のドメインを管理することができる。加えて、自由にグループ分けや名前付けで、一つのパッケージあるいはプログラムとして管理できる。
他の外資系ベンダーと同様にM&A戦略を推し進めており、直近ではSoftscapeやGeoLearningを買収。「これまでは、LMSの分野で評価されてきた。現在は、EPMをはじめとする製品群との両輪で事業を展開している」(竹田謙二社長)。
スイート化に取り組む一方で、市場の深耕にも着手。大企業に加え、中堅・中小企業(SMB)向けの施策を投下している。その一つがSMB向けのLMS「Learning Maestro」のリリースだ。大企業向けは、「Enterprise Learning」を拡販している。このほか、SaaS/ホスティングの提供でSMBの新規契約につなげようとしている。現在、グローバルでは1000社ほどがSaaS/ホスティングのユーザー企業で、「日本では十数社程度」だという。
すでにLMSのパートナーは、OEM供給しているワークスアプリケーションズをはじめNECやCSK、LMSのコンテンツプロバイダなどが存在する。タレントマネジメントを合わせると、アクセンチュアや日本IBMなどもパートナーである。
今後は、旧オフコンディーラーのほか、地方のベンダーなどに“売れる新商材”として訴求していく方針だ。人事・給与システムベンダーとの協業に関しては、「数年前に試みたが、当時はベンダー側に受け入れられなかった」という苦い経験がある。
2013年度には、グローバルで売上高300億円を目指している。国内市場は、売上高全体の5%にまで引き上げる計画だ。「今の3倍にまで事業を拡大する。LMSユーザーにタレントマネジメントを売るなどアップセル、クロスセルを強化していく」。
サバ・ソフトウェア
チェンジマネジメントの一手として
サバ・ソフトウェアは1997年に最初のLMSをリリースして以来、評価管理や後継者計画、ワークフォース・プランニングなどの製品強化を重ね、現在は総合人財プラットフォームを標榜するスイート「PEOPLE SYSTEM」を販売している。
グローバル化の進展などに伴い、事業の多角化や業務変革に取り組んでいる企業のチェンジマネジメントの戦略的構成要素として、「マーケティングや組織設計のために運用されるのがサバだ」と尾藤代表取締役は自慢する。「非常に力を入れている」というのが、コラボレーションスイート「Saba Collaboration Suite」の開発だ。これは、「Saba Centra WebConferencing」と「Saba Live」で構成している。
「Centra Web Conferencing」では、ウェブ会議やオンラインセミナー、VOIP機能を活用した映像、アプリ共有、遠隔教育などができる。「Live」は企業内SNSで、個人のプロファイルやTwitter、Facebook機能を活用できる。
国内では、累計30社ほどのユーザー企業を抱え、上流コンサルティングパートナーであるIBMやPWCをはじめ、SIパートナーやコンテンツパートナーなどと協業して拡販している。
米国では売上高のうち、新規ライセンスの発行が占める割合が30%で、初期導入に関するサービスが20%、既存顧客への追加ライセンス/サービスが50%となっている。日本でもサービスの売り上げ比率は高いという。ただ、日本市場の売上高は全世界の5%に満たないのが現状だ。従業員5000人以上の規模で、売上高の50%以上を国外で占める大企業を対象に提案活動を推進する。
経験値をアピールする
メガベンダー SAPジャパン
総合力で勝負
SAPジャパンが提供する「SAP ERP Human Capital Managementソリューション(SAP ERP HCM)」は、各国の事業に合わせた人事項目、他言語・多通貨などのグローバル対応や機能の豊富さ、操作性、システム管理機能によるシステムの連携性を謳っている。
同社のタレントマネジメントの特徴の一つに定性情報の管理と活用がある。南部長は、「タレント管理というと、スキルやコンピテンシーなどが項目に挙げられる。しかし、従業員の情報はすべてをコード化できるわけではない」と、企業の見落としがちな課題を指摘する。
同社のタレントマネジメントは、アンケートのフィードバックシートや研究論文、プロジェクトの発表資料など、文字情報としてしか管理できない一種の経験を成果としてすべて管理。従業員の異動履歴などと紐づけて履歴書として一覧化し、年表形式で表示できる。情報はすべて文字検索することができる。
同社は3年ほどで100社にまでユーザー企業を拡大させる方針。「国内だけで事業を展開している企業からの需要はあまりないのではないか。従業員が2000、3000人以上の大企業が主なターゲットで、海外進出していれば中小企業も対象になり得る」。
日本オラクル
業務基盤の柔軟性を強みに
日本オラクルの「Oracle Human Capital Management(Oracle HCM)」は、人事業務に特化した「PeopleSoft Enterprise」と人事業務のほか会計、生産、顧客管理などの業務に対応する「Oracle E-Business Suite(Oracle EBS)」の二つがある。「タレントマネジメントの機能にほとんど違いはない。人事・給与だけやビッグバン型など、状況に合わせて導入できる」(安井清一郎アプリケーション事業統括本部ビジネス開発部担当シニアマネジャー)。
Oracle HCMは多通貨・多言語に対応し、グローバルでの実績が豊富である点が国産パッケージと異なる。それだけではない。ある大手製造業は、システム構成がオラクルのみでサードパーティのサーバーを利用していないことを支持したという。
PeopleSoftの大きな特徴はアプリケーションと基盤部分の分離だ。基盤部分である「PeopleTools」は、PeopleSoftの全アプリの実行基盤と開発基盤、運用ツール群を提供している。基盤部分だけをアップグレードでき、企業の独自要件で標準機能と合致しない業務に関しては、PeopleToolsのコンポーネントである「Application Designer」で機能を開発できる。標準機能に影響を与えることなく、システム間で連携できる。
個別対応で差異化する国内勢
日立ソリューションズ
パッケージを“売り”にせず
日立ソリューションズが販売する「リシテアCareer」は、旧日立システムアンドサービスが別会社との合併に伴い、社内開発したパッケージだ。「ITSS(ITスキル標準)をベースにしたため、500~700人規模のベンダーや企業のIT部門などで導入が進んできた」(平山純・APソリューション本部リシテアソリューション部グループマネージャ)。累計80社ほどのユーザー企業を抱える。
近年は、大手製造業や地方銀行、信用金庫などでも導入事例が生まれ始めているという。「グローバル対応を謳う外資系ベンダーの製品は、若い企業であったり、人の流動性が高い企業であったりすれば活用できる場合もあるのかもしれないが、伝統的な企業からは国内独自の評価・育成制度にもとづいた仕組みを求められている。これへの解決策を提供したいと考えている」(同)。
外資系の攻勢が目立つなか、同社は正面からぶつかろうとは考えていない。「誤解を恐れずにいえば、パッケージは“売り”ではない。保守サポートやアドオン、カスタマイズによる丁寧な対応で差異化している」(同)。
直接販売が中心だが、「リシテア」の既存パートナーや日立系販社などにも販売してもらう考え。大企業を中心ターゲット層に据えるという。今後、プライベート環境でのクラウドサービスの提供ならあり得るとしている。
クレオマーケティング
業種別テンプレートを用意
クレオマーケティングの「Zeem 人事開発」は、近年ラインアップに追加した製品だ。「SMBに限らず、企業はどこまで人材マネジメントに真剣なのか、現状では疑問。まだ、情報を“見える化”したいという状況にとどまり、戦略的な活用にまで目が行っていない」(野口祐司・Zeem事業本部セールス統括部営業部担当部長)。
提供している機能のうち、汎用性が高い部分は完全標準化し、固有性の高い機能はテンプレートを用意している。NTTデータイントラマートのシステム共通基盤「intra-mart WebPlatform」上で開発した業種テンプレートを適用することができる。
現在の販売チャネルはほぼ直販。林森太郎社長は「SaaS型での提供は選択肢の一つ」だとしている。