SIビジネスにおけるパブリッククラウドの活用が急ピッチで進んでいる。有力SIerは、Amazon、Azure、Salesforce、Googleという世界4大パブリッククラウドを巧みに自らのビジネスに取り込む。パブリッククラウド活用型SIビジネスの最前線を追った。
飛躍的に拡大する活用領域
国内DC使用でより身近に
パブリッククラウドの活用領域が飛躍的に広がっている。AmazonやWindows Azureサービスが相次いで日本国内にデータセンター(DC)設備を置き、Salesforceも今年11月をめどに国内にDCを設置する予定だ。海外のDCを使うイメージがあったパブリッククラウドだが、ここへきて国内DCベースのサービスも選択できるケースが増えている。通信速度が向上するとともに遅延も改善され、日本のITベンダーやユーザーにとって、より身近で、使い勝手がよくなりつつある。
世界の“四強”が出揃う 一昔前まで、パブリッククラウドといえば、物好きなテッキー(ハイテク技術者)の好奇心を満たすか、せいぜい暫定的な開発環境として活用する程度だった。それが今では、世界中で利用できるインフラに成長しつつある。自らデータセンター(DC)設備をもたない中堅SIerやベンチャー企業はもとより、巨大なDCを運営する有力SIerに至るまで、パブリッククラウドを積極的に取り入れようとしている。この特集では、SIerのビジネスにおいてパブリッククラウドがどのように活用されているのか、その最前線をレポートする。
パブリッククラウドは、IaaS/PaaSを軸とした「Amazon Web Services(AWS)」「Windows Azure Platform」、SaaS的な要素を多く含む「Salesforce」「Google Apps」が、世界四大クラウドといわれている。IBM系のSIerは、これに「IBM Smart Business Cloud」を加えて世界五大クラウドという場合もある。SIerにとってみれば、SIや開発が伴うIaaS/PaaS型のサービスのほうが、自らが活躍できる領域が大きくなる。一方、SaaS型サービスは、顧客管理やカレンダー、メール、ワークフローなど、用途があらかじめ決まっているケースなどで役立つ。
パブリッククラウドに共通していえることは、従来型DCを活用するよりも価格が1ケタ安いことだ。データ量や通信トラフィック量に応じて従量課金されるケースが多いので、イベントやキャンペーンなど一定期間だけに使うシステムとか、オンラインゲームやネット通販などユーザー数の伸びの予測が難しいジャンルに適用することで、大幅なコストダウンが可能になる。一方で、長い年数にわたって恒常的に使う基幹業務システムなどは、従来型のホスティングやハウジングサービスを活用したほうが、トータルでみて割安になるといわれている。
基盤コストは1ケタ安い  |
日立ソリューションズ 西條洋執行役員 |
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日本ビジネスコンピューター 近藤隆司執行役員 |
日立ソリューションズは、ユーザー企業が行うイベントやキャンペーンを支えるシステムで積極的にパブリッククラウドを活用している。直近では、東日本大震災後に岩手放送が行ったチャリティイベントでAmazonのパブリッククラウドサービスを適用した。募金用のホームページをPCやスマートフォン、携帯電話に向けて作成し、クレジット決済機能を盛り込んだ。システムそのものは難しいものではなかったが、「どのくらいのハードウェア能力を用意したらいいのかの予測が最も難しい」(日高恵司・流通サービスソリューション本部第2システム部技師)という。
結果として、必要に応じてITリソースを拡張することができるAmazonを選び、Amazonが今年春に開設した日本のDCと、万一の障害が発生したときのために、AmazonのシンガポールのDCにもバックアップ用のリソースを確保した。一般的に1万人規模のアクセスがあるイベントで使うハードウェアを自前で揃えようとすれば軽く2000万~3000万円はかかるといわれているが、パブリッククラウドを使えば「ケタが一つ少なくて済む」(日高技師)。SIerとしては、案件規模が小さくなってしまうので痛し痒しのところがあるものの、「顧客との関係強化という無形の資産を考えると、クラウドの大きな流れに逆らうことは、むしろマイナス」(西條洋執行役員)とみている。
日本ビジネスコンピューター(JBCC)は、JBグループで開発したクラウド対応の業務アプリケーションソフトのプラットフォームとしてAmazonを活用。従量課金のパブリッククラウドでは、「ユーザーがまだ1社しかない段階から、少なくともインフラ分の損益分岐点を超えられるようになった」(近藤隆司執行役員)と、ほくほく顔だ。 次ページからは、パブリッククラウドの発展の方向性を探っていく。
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