<参入から3年~>
市場性は十分 日本市場にさらに食い込む
ネットスイートは、クラウドERP市場の開拓者だ。設立は1998年で、2002年には中小規模企業向けにCRM/ERP(統合基幹業務システム)/Eコマースを統合したビジネススイートである「NetSuite」をリリースした。
近年は、大企業への攻勢が目立つ。本社にSAPやオラクルなどの大規模なERPを導入しているグローバル企業の海外拠点や子会社に、短期間・安価に導入できる「NetSuite」を展開している。いわゆる2層ERP戦略である。ユーザー企業は1万社を超え、2012年度の通期売上高は3億ドルとなる見込み。直近3年間で、伸び率84%の急成長をみせた。
日本市場への参入は、2006年4月。中小企業の開拓を狙い、トランスコスモスやミロク情報サービスと提携して失敗に終わった苦い経験がある。2009年に入り、富士通ビジネスシステム(現・富士通マーケティング)と提携し、日本向けにローカライズしたクラウドERPである「NetSuite-Release J」を提供し始めた。
直近では、SAPビジネスに強い有力SIerのJSOLと提携。JSOLの尾崎俊作・営業統括本部マーケティング部長は、「これまでSAPビジネスを手がけてきた。SAPの場合、3年ごとくらいしか新機能が実装されないが、ネットスイートはもっとスピードが速い」と評価する。
JSOLがネットスイートとの提携に踏み切った背景には、クラウド普及を受けたSIビジネスに対する危機感がある。2010年頃から2層ERP戦略を推進するネットスイートに対する関心をもっていたという。従来は、SAPシステムをグループ全体に展開する手法を採っていたが、「実際にはone operation,one dataにならない」(尾崎部長)という状況だった。グローバルKPI(重要業績評価指標)を管理するために、マスターデータ管理に多額の投資をして、データ統合を図る必要性が生じていた。
大濱寛樹・営業統括本部部長は、「まずは、試験的に関西から小さく始めた。ビジネスとして成長の可能性があれば、戦略をしっかり立てたい。SAPを知る強みは十分に生かせるだろう」と語る。
JSOLは、ネットスイートにとって心強い存在となりそうだ。だが、こうした朗報ばかりではない。ネットスイートが抱える課題の一つが、クラウドアプリケーションの開発プラットフォーム「SuiteCloud」の活用だ。グローバルで、「SuiteCloud」を利用する開発者は5500人に上り、ISVが提供するクラウドアプリ「SuiteApps」は1万8000を数えるまでになった。だが、日本ではそれらの数は十分に伸びていない。
田村元社長は、「『SuiteCloud』では、ユーザー自身がシステムを構築したり、変更したりできる。統合開発環境(IDE)などが海外では支持を得ている。一方で、日本では“システムは納品するもの”という意識が根強く、『SuiteCloud』の開発者が少ない。日本でもメリットを享受できるようになってもらいたい」と説明する。
重要書類をセキュアに扱う 1996年、JPモルガン銀行の出身者が立ち上げたのがイントラリンクスだ。大型の資金調達ニーズに対して、複数の金融機関が協調してシンジケート団を組成し、同一条件・契約にもとづいて融資するシンジケートローンにおける情報管理に商機を見出し、オンライン上のドキュメント管理システム「IntaLinks On-Demand Workspace」を発表した。
従来、金融業界では膨大な書類を扱い、宅配便やメッセンジャー、ファックスなどを使って、重要で秘匿性の高い書類を配布するのが主流だった。だが、このプロセスには時間がかかり、安全性にも危惧すべき点があった。「IntaLinks On-Demand Workspace」は、シンジケートローンのプロセスに特有の問題を解決したい金融機関に受けた。
現在、グローバルでは、製品を拡張し、製薬業や製造業、不動産業などの幅広い業界で導入が進んでいる。2万5000社、75万人が利用した実績をもつ。毎日3万人単位のユーザーがアクセスし、累計5万5000件以上の取引が完了した。
当然ながら、セキュリティは継続的に強化している。例えば、ドキュメント保護(IRM)、守秘義務契約、ペネトレーションテスト、SAS70タイプ2認証取得、FDA 21CFR Part11対応などである。
日本進出は、2008年。電通国際情報サービス(ISID)が独占的な提携関係を結び、販売に乗り出した。日本語化開発を担い、日本特有の商慣習などの要求を取り込んできた。すでに、みずほコーポレート銀行や東京三菱UFJ銀行、三井住友銀行、第一三共、住友商事など、業界を代表する企業が利用しており、累計は1000社に上る。
近年、グローバルで大きく伸びたのがM&A案件のデューデリジェンス(売り手企業の会社内容の精査手続き)用途で、ウェブ上に仮想的会議室(VDR)を構築するサービスだ。複数の買い手企業が同時期にデューデリジェンスを実施することで、M&Aの手続きを効率化する。長崎一男・日本代表は、「米国企業の80%がVDRを利用、EUでも70%。だが、アジアではまだ20%に満たず、それだけに市場の伸びが期待できる。とくに、日本はアジアのなかでもM&A件数が飛び抜けて多く、浸透の余地が高い」と期待する。
一般企業での利用促進も進める考えだ。機密性の高い文書や知的財産関連の重要資料が企業内にはある。こうした重要資料を厳格な権限体系で管理するために、イントラリンクスのソリューションを提案できる。
2012年は、パートナービジネスのテコ入れと認知度の向上を図る。長崎日本代表は、「金融業界ではよく知られているが、まだまだ認知度向上に努める必要がある。また、金融以外の業界を攻めるためにも、特定の業界に強いパートナーと組んでいく。現在、直接販売と間接販売の比率は半々。SIerやコンサルティングファーム、金融サービス業者など、あと2~3社はパートナーを増やしたい」と話す。
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