【Volume 2】――Products
海外進出企業向け製品
●多言語化は必須アイテムに 凸版印刷の関連会社で日本IBMのソリューションプロバイダのトッパンエムアンドアイ(トッパンM&I)は、受注が年々減る傾向にある主力事業のシステム基盤構築を補うために、10年3月から「クラウドビジネス」に参入した。同年10月には、日本IBMが国内に保有するデータセンター(DC)などを基盤としたSaaSサービスの提供を開始している。
トッパンM&IのSaaSサービスは、現在「いいね!」投稿でドキュメントを共有できるなど、独自色の強いドキュメント管理システム「Document Caretaker」やクラウド型のeラーニング「Learning Caretaker」などが揃っている。いずれも自社開発サービスではなく、協業する他社からOEM供給を受け、自社ブランドで提供するサービスだ。同社は今後も月額従量課金制のSaaSサービス・メニューを拡充するが、既存サービスを含め、すべてが多言語(マルチランゲージ)のユーザーインターフェース(UI)を備える。
同社の新設部門、先進ソリューション・クラウド推進本部の村北光明・本部長は、次の三つのような利用方法が急速に増えることを想定し、多言語化を大前提とした。(1)日本人が海外拠点で使う、(2)在外企業が日本に来て使う、(3)外国人が日本国内や海外拠点で使う──の3点だ。「産業の空洞化」などによって海外進出が進むのは自明の理で、多言語対応したサービスは、非対応の競合サービスに比べて競争優位に立つとの判断だ。
日本マイクロソフトが昨年6月に提供を開始した企業向けクラウドサービス「Office 365」は、すでに海外に拠点を構えていたり、海外拠点を設ける計画をもつ企業に導入が進んでいる。「Office 365」は、同社サーバー製品の「Exchange」や「SharePoint」のクラウド(オンライン)版といえるサービスだ。電子メールをはじめ、予定表や「Office Web Apps」などを備え、どこからでも安全にアクセスすることができる。
海外進出企業に「Office 365」の導入が進む理由は、88か国/32言語の多言語に対応していることや、既存のオンプレミス(企業内)とハイブリッドに共存できることなどにある。日本マイクロソフトのOfficeビジネス本部・鷲見研作エグゼクティブプロダクトマネージャーは、「日本国内は既存のOfficeなどを使って、海外拠点ではクラウド環境でOffice 365を使うことができる」として、海外拠点での余分なソフト投資などが不要であることを訴求する。
例えば、中国に従業員の半分を抱える西日本の水産業者は、グーグルの「Google Apps」を「Office 365」に替えた。中国では、検索システムも含めてGoogle環境が使いにくく、中国でマイクロソフト製品を入れる場合、使用許諾の確認が必要で導入が煩雑になるからだ。鷲見マネージャーは「従来のオンラインサービス『Business Productivity Online Service(BPOS)』の導入数増加の速度に比べて、8~10倍も勝っている」と断言する。急速に導入が拡大しているため、「海外進出企業向けの提供シナリオがキーワードになりつつある」(同)とみて、グローバルを切り口として、今年度(2013年7月期)は「Office365」を前年度比で倍に増やすことを狙う。
●マネジメントのグローバル化 メールや情報共有などのフロント系システムに限らず、経理財務などバックオフィス系システムを「グローバル化」する流れが顕著なのも、海外進出企業向け製品・サービスが注目度を増している理由だ。前出のディーバは、7月3日、「『マネジメントのグローバル化』時代における経理財務部門の役割」と題し、東京でセミナーを開催した。同社が提案する地域統括会社向けのソリューションは、単一の「Diva System」で複数通貨の連結財務諸表を作成することができ、英語での連結処理が可能だ。
岩佐執行役員は「本社は世界のガバナンスを強化したいと思い、海外拠点の統括会社は域内マネジメントを整えて、事業の最適化を図りたいと考える」とみており、ディーバのソリューションで、それが実現できると自信を示す。世界のITシステムのコスト削減とガバナンス強化の両立を目指すソリューションは、競合他社や同社サービスと連携するERPやワークフロー製品などを提供するITベンダーでも需要が拡大している。
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