両雄はともにパートナー制度をテコ入れ
●SMBが得意なパートナーを獲得 
グーグル
大須賀利一マネージャー 2011年、グーグルは、エンタープライズ部門におけるコラボレーションツール「Google Apps」事業の強化に乗り出した。当時、本紙の取材に応じた阿部伸一・エンタープライズ部門マネージング ディレクターは、パートナー企業の質の向上と、SMB向けのパートナー企業の増強を目指すことを明らかにした。
実際に、リセラー施策を強力に推し進めて販売増に努めてきた。大須賀利一・エンタープライズ部門マネージャーは、「この1年で数万人規模の企業の導入実績が上げられるようになった。より多くのSOHO、SMBにも使ってもらえるようになった」と語る。有力リセラーである富士ソフトが取り扱いを始めた2008年当時は、ほとんどの競合他社がまだクラウドサービスを手がけていない状況だった。浜野博行・プロダクトサービス事業本部クラウド部クラウド第2営業グループリーダーは、「スマートフォンの普及に伴ってクラウドの認知度が上がってきた」としつつ、現在は、先行ユーザーが導入してニーズが一巡した状況とみる。
グーグルのクラウドサービスでは、導入のコストや手間が少ないことを謳う。年間で100以上の機能をアップデートしている。「以前は、オンプレミスかクラウドかという選択がなされていた。そのうえで、パブリックかプライベートかという検討がなされて、最終的に製品が購入されていた。今は、クラウドありきの声が増えている」(大須賀マネージャー)。
現在、リセラー以外のパートナーの充実を模索中だという。とくに多拠点を抱える大企業が、OutlookからGmailへの移行や導入のヘルプデスクの整備などに対する不安を払拭するために、「よりスケーラブルな枠組みを検討している」という。小規模だがクラウドサービスやコンサルティングサービスの提供に長けたITベンダーで、例えば米国でパートナーのホワイトストラタスのような存在を新たなパートナーとして想定しているという。
グーグルのパートナー支援体制は競合に比べてぜい弱だ。富士ソフトの田中基敬プロダクト・サービス事業本部クラウド部クラウド第2営業グループグループ長は、「リセラーが増え続けている分、グーグルにはそのコントロールをしっかりしてほしい」と注文をつける。
●「Open」が与えるインパクト 日本マイクロソフトの「Office 365」は、前身のサービスである「Business Productivity Online Suite」に比べて10倍以上の速度で成長しており、顧客導入数は前年対比4倍増と勢いがある。
クラウドに特化したパートナーの強化にあたって、3顧客以上150シートの実績を条件とするクラウドアクセラレートパートナーという認定制度を設けた。クラウドアクセラレートパートナーは百数十社存在し、新規獲得や利用の継続の際にインセンティブ面で優遇されている。
パートナーは、「Office 365」の販売やその後のサポートの継続的な提供に対して日本マイクロソフトから手数料を得る。つまり、パートナーは自社で料金を徴収することができない。ただ、一部のパートナーはユーザー企業と直接契約を結び、「Office 365」をオリジナルブランドで販売できる。
こうした販売の仕組みは、「Office 365 Open」で変わることになる。国内での展開時期は未定だが、1000社以上のパートナーが直接ユーザー企業に料金を請求し、徴収できるようになるのだ。一部の特別待遇のパートナーを除いて、多くのパートナーにとってメリットは大きい。
ガートナーの見解にみる「Google Apps」と「Office 365」の相違点
今年10月5日、ガートナー ジャパンが開催した「Gartner Symposium/ITxpo 2012」に登場した志賀嘉津士リサーチ ディレクターは、「Google AppsとOffice365のどちらを選ぶべきか」というセッションで、グーグルとマイクロソフトの戦略の違いを説明した。
志賀リサーチ ディレクターは、「多くの企業には、グーグルが意図的に企業ニーズを無視しているようにもみえるだろう。だが、グーグルは企業要件のサポート改善に向けて取り組んでいる」と説明する。
機能に目を移してみると、「Google Apps」は弱みだった管理者機能の充実を図っているのが目立つ。一方で、「Office 365」は、インスタントメッセージング機能や音声機能のLyncにもモバイルクライアント機能を追加し、全般的にモバイル環境を強化。このほか、リモートワイプ機能や個人別のポリシを設定するMDM(モバイルデバイスマネジメント)機能などを新たに実装し、低価格プランも用意した。「両社の特性は接近してきており、コストやセキュリティ、業種、規模の違いなどが大きな差異化要因とはならなくなってきた」とみる。
グーグルとマイクロソフトは、いずれも優秀なリセラー、ソリューションパートナーの絞り込みと確保に動いており、リセラーの量から質への転換を図っている。ただ、グーグルはパートナー施策に力を入れているものの、実態としてマイクロソフトに比べてリセラーの実力にバラツキがあり、属人的だという。
[次のページ]